
さらに、いまの全日本では、有力選手が4回戦から登場する「スーパーシード」方式を採用しているため、優勝しても1大会につき6勝しか上積みできない。試合方法が変わらないかぎり、これからの選手が伊藤を上回るのは至難の業といえる。
伊藤は、世界選手権に6回出場し、5回の優勝(団体3回、女子ダブルス、混合ダブルス各1回)経験をもち、全日本選手権でも8回の優勝(シングルス2回、女子ダブルス、混合ダブルス各3回)を誇る。「卓球ニッポン」を支えてきた往年の名選手だ。だが、年々、白星を量産するのが難しくなり、卓球を続けるかどうか、思い悩んでいた時期があったという。
そんなある日、卓球ジャーナリストの鈴木一氏から通算の勝ち星を訊ねられた。それまで気にしたこともなかったが、数えてみると70勝ぐらいになっていた。「それなら100勝を目指して……」という具体的な数字を示してもらったことで、目標がはっきりした。消沈しかけた心が、また奮い立った。