強くなったな。
ITTFプロツアーの「ジャパンオープン」に出場した福原愛を目のあたりにした率直な感想である。この大会、女子シングルスの予選を通過した彼女は、決勝トーナメント初戦で世界ランキング37位(9月3日現在)の韓国選手に競り勝ってベスト16に進出した。
つづく中国の張瑞とのベスト8決定戦では、凄まじくピッチの早い両ハンドで押しまくり、相手を蒼ざめさせた。フルセットの末、試合運びの差によって振り切られたものの、第5セットにマッチポイントを奪うという戦いぶりは、世界のトップクラスが集う国際大会においても、けっして引けをとるものではなかった。
いまさらこのようなことを書くと、彼女はもともと強かったじゃないか、なにを寝ぼけたことを、という反応が返ってくるかもしれない。
むろん、私だって、彼女が弱いと思っていたわけではない。だが、たとえば、今年1月の「ジャパントップ12」の福原を見たかぎりでは、マスコミから「天才少女」と持ち上げられる「愛ちゃん」と、その実力とのあいだには、まだまだ大きな開きがあった。
小山ちれから第1セットを先取する健闘をみせたのは、福原の武器であるピッチに、小山もあえてピッチで応戦していたからであり、案の定、意地を捨てた小山がコース取りを優先させた第2セット以降、福原は翻弄されるばかりだった。
小山は試合後、全日本選手権でランク入りを逃した福原に「トップ12」の出場権をあたえた日本卓球協会にたいして、「どうして福原を選ぶのかわからない。全日本ベスト16でも選ばれない選手がかわいそう」と怒りの抗議をしたのだが、それは一理あると私にも思えた。
もちろん、福原に非があるわけでも、彼女を責めるわけでもない。ただ、その時点での彼女からは、「この年代にしては強い」という以上の印象を受けなかったし、少なくとも、真の「トップ12」にはほど遠いという感は否めなかったのである。
それから、わずか8ヵ月、私は「この年代にしては」という但し書きを外してもいいと思った。それほど「日の丸」をつけてプレーする彼女に違和感がなかったばかりか、2004年の世界選手権団体戦では日本のエース格に成長していたとしてもおかしくはないとすら感じさせられたのだ。
強くなった最大の要因は、「身長」であるように思えた。新聞記事によれば、148センチになったという。リーチが長くなったことにより、左右に揺さぶられても体勢を崩される局面が少なくなった。目一杯だったプレーを、余裕をもってこなせるようになった。
もしかすると、中学生になったことで、彼女の内面にも変化があったのかもしれない。私は初めて福原の「声」が聞いてみたくなり、記者会見にまぎれこんだ。