日本卓球協会は2001年4月から、プロとアマに分かれている選手の登録区分をなくすことにしました。
プロとアマチュアの登録区分がなくなることで、アマチュア選手はこれまで所属チームなどに納めていた大会の賞金を自分で受け取れるようになり、一方、プロ選手は国民体育大会への参加が認められるほか、協会の承認が必要となる大会への出場申請手続きなどが解消されることになります。
また、日本卓球協会は来年度に賞金付き大会を3大会開くことも決めました。仕事と卓球の二足のわらじを履き、稼げるようになるにつれ卓球に専念していくヨーロッパにならい、日本でもようやくプロ的な環境づくりが一歩進んだわけです。
そもそも日本卓球界におけるプロ化の歩みは、1986年に日本卓球協会が「レジスタード・プロ」の制度を設けたことにはじまります。
協会がプロ登録を認めた選手は、大会で賞金を稼いだり、講習会を開いたりすることで収入を得ることができるようになったのですが、1993年に松下浩二選手がプロ登録したのが最初で、その後も一握りの選手しかこの制度を利用しませんでした。
プロ制度は設けられたものの、国内の賞金付き大会は極めて限られており、プロになっても生活の保障がないというのが大きな理由です。
ところが、2000年に入るとプロ登録をする選手が急増し、昨年12月現在で38人にまで膨れ上がりました。
どうしてこれほど増えたのかというと、プロ化推進に積極的な健勝苑がスポンサーとなり、2000年4月から賞金付き大会を全国で開催することにしたからです。
しかし、その開催案に対して日本卓球協会は、プロ化の推進は協会が主導権を握るのが筋、と難色を示しました。
結局、両者の折り合いがつかず、健勝苑は所属していた日本リーグから脱退し、卓球部のメンバーをこぞってプロ登録させ、独自のツアーを開催したのです。
この動きを受けて、日本卓球協会は昨年10月、協会や加盟団体以外の企業などが独自に主催する賞金付き大会は認めず、それに出場した選手は協会から登録を抹消することもあると「けん制」したのです。
たまらないのは選手側です。特にプロ選手にとって賞金は生活の糧ですから、稼ぎの場を奪われるのは死活問題です。
協会の姿勢に疑問を投げかけた選手サイドに協会側が歩み寄り、今回のプロ、アマ区分の撤廃という決定に落ち着いたのだと思われます。
協会、および健勝苑の主張はともかく、ファンの立場からすれば、日本に強くなってほしい、世界選手権や五輪で金メダルをとってほしい、と願う人が大半だと思います。そのためにはプロ化に及び腰ではいけないというのが世の流れです。
松下選手はこう言っています。「せっかくお金を出すというスポンサーがいるのだから、協会は素直にもらって、手を携えながら日本のプレー環境の整備を進めてほしい」
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