フェデラーが一目置くテニスプレイヤーとは?
今年2007年のローランギャロス。公式の記者会見の場ではないが、年間グランドスラムについて尋ねられたフェデラーは、「自分より年間グランドスラムに近い男がいる。ミスター国枝だ」ということを言ったという。またあるインタビューで、フェデラーに記者がこう質問した。
「日本人はなぜ勝てないのか?」
フェデラーは答える。
「ミスター斉田とミスター国枝がいるじゃないか!」
フェデラーが一目置く「ミスター斉田とミスター国枝」とは、日本が誇る車いすテニスの第一人者、斉田悟司と国枝慎吾。2003年ワールドチームカップ(国別対抗戦)で初の世界一、2004年アテネパラリンピックダブルス優勝、2007年オーストラリアンオープンダブルス優勝、シングルス優勝(国枝)、先の2007年ローランギャロスダブルス準優勝、シングルス優勝(国枝)、そして6月にスウェーデンで行われたワールドチームカップで日本を2回の世界一に導いた立役者だ。
2007年ワールドチームカップ(国別対抗戦)で再び世界一に!
世界ランキング4位斉田悟司(2007) |
シングルNo.2に出場するのは、斉田悟司(世界ランキング4位)。対戦相手は世界6位の選手。斉田は直前の5月に行われたジャパンオープン(福岡)で、この相手に苦杯を舐めさせられている。
リベンジを誓う斉田、第1セットを6-4で奪い、第2セット終盤6-6後に行われるタイブレークまでもつれる。相手のエースが増え、流れが悪くなり、迷いが生じる斉田。そこで日本代表チームの丸山弘道コーチがかけた言葉は、「自分のテニスを信じて真っ向勝負」。この言葉が効いたのか、斉田はタイブレークをもぎ取り勝利。
この瞬間、斉田は込み上げる気持ちを抑えきれずガッツポーズが自然と出た。その気持ちは「信じられない」というより、「ほっとした」というのが正直なところだった。
丸山は言う。「直前の大会で負けている悟司にとって、大きなプレッシャーがかかっていた。しかし、悟司は長く日本を支えてきた精神力でそれを跳ね除けた」と。
世界ランキングNo1の国枝慎吾(2007) |
第1セットを6-4で取り、第2セット。プレッシャーを感じてくる場面で、丸山と国枝は確認する。「感じるがままにひらめきでプレーしよう」。その通り、彼はやりきった。
最後のポイントは、セカンドサーブでノータッチエース。ファーストサーブ同様の強打。ダブルファーストとというセオリーではないことを国枝は大舞台でやってのけたのだ。
天を仰ぎ、ガッツポーズ。雄たけびをあげる国枝。チームのメンバーと握手し、そして抱き合う。この瞬間に4年ぶりの日本の世界一が決定した。