ゴルフ/ゴルフ関連情報

大岡昇平『アマチュアゴルフ』を読む(4ページ目)

『俘虜記』『レイテ戦記』などの大作で知られる作家、大岡昇平は熱狂的ゴルファーでもありました。その大岡昇平がハンディキャップ22でありながら世に問うたゴルフレッスン本『アマチュアゴルフ』を紹介します。

児山 和弘

執筆者:児山 和弘

ゴルフガイド

生々しい時代の証言を知ることができる

大岡昇平の実質的文壇デビュー作となった『俘虜記』。アメリカ兵に捕まり、捕虜収容所で終戦を迎えるまでを自己の体験を元に書かれた小説
アマチュアゴルフ』が出版されたのは、1961年。当時は、1958年に刊行され現代もスイング理論のバイブルとして多くのゴルファーに影響を与えているベン・ホーガンの『モダン・ゴルフ』の理論が全盛で、アーノルド・パーマーがいよいよ登場したころだといいます。

大岡昇平は元来フッカーで、同じくフックで悩んだベン・ホーガン同様のスクエアグリップ(※現在はややウィークグリップと言われる)を『モダン・ゴルフ』以前に実践し、フック抑制に役立てていたといいます。

『アマチュアゴルフ』では、1960年に刊行された陳清波プロの『近代ゴルフ』で紹介されたダウンブローにも言及しています。もっとも内容は「われわれ、ハンディ20クラスにはさし当り、月の世界の理論」と否定的です。しかし、ダウンブローという新しいテクニックがゴルファーにとって少なからぬ関心を持って迎えられたことが伺えます。

大岡昇平は、戦前に一度ゴルフをはじめています。25歳の頃で、年上の友人、河上徹太郎に連れられ、エチケットやマナーを叩き込まれたといいます。「われわれの仲間でも、河上さんのような心掛けの人が少なくなっていくのは、なげかわしいことである」といっています。ゴルファーのマナーが悪くなるのは、何も今に始まったことではないようです。

「昭和九年は、まだボビー・ジョーンズ華やかなりし頃で、スウィングはまず右足に体重を移し、それから左へ乗りながら打つというモリソン理論一点ばりだった」と回想する大岡は、最初に習った理論のためスウェーの癖が抜けなくて困ったといいます。当時は道具もヒッコリーシャフト。同時代に球聖と呼ばれたボビー・ジョーンズの影響を受けているのはなんとも歴史を感じさせます。

こうした生々しい時代の証言を知ることが出来るのも『アマチュアゴルフ』の特徴です。当時の状況やゴルファーの気質を知るのはとても興味深いものです。

>>次は、入手するには?>>
  • 前のページへ
  • 1
  • 3
  • 4
  • 5
  • 次のページへ

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます