魔女に翻弄されるマスターたち
ガイドが、印象に残っているのは1996年のマスターズ。初日に現在も破られていない1ラウンド最小スコア「63」をマークし飛び出したグレッグ・ノーマンが、3日目終わって2位に6打差と独走態勢に入っていながら、最終日バック9に信じられない大崩れで6オーバーの「78」。ニック・ファルドに大逆転の優勝をさらわれました。当時、多くの人が認める世界最強のゴルファーだったノーマンが3日目終わって大失速するなど、予想できた人は誰もいないでしょう。しかし、オーガスタの魔女はノーマンに悪夢のような結末をつきつけました。
次の年1997年は、前年のノーマンの悪夢の敗退の余韻の中、タイガー・ウッズが史上最年少で初優勝します。タイガーの優勝は、まさに新時代のスターの登場を印象づけるものでした。そのときの18アンダーという優勝スコアは、史上最小スコアとして現在も破られていません。コース改修の行われ難易度の増した現在、この記録が破られることは恐らく今後もないでしょう。
タイガーはマスターズで既に4勝しています。史上最多優勝回数は、“帝王”ジャック・ニクラウスの6回。特に1986年の大逆転優勝は、マスターズの長い歴史の中でも最高のハイライトです。
ちなみに、そのときニクラウスと優勝を争ったのもグレッグ・ノーマン。次の年の1987年にはラリー・マイズに恐ろしく難易度の高い距離から奇跡のチップインを決められプレーオフで敗退するなど、何度も何度も優勝に手が届きそうになりながら、そのたびにオーガスタの魔女にそっぽを向かれてしまいました。
タイガーやニクラウスなどの成績からもロングヒッター有利といわれることの多いマスターズですが、実際には昨年優勝のザック・ジョンソンの他、ホセ・マリア・オラサバル(2勝)やニック・ファルド(3勝)、ベン・クレンショー(2勝)、ベルンハルト・ランガー(2勝)などそれほど飛距離の出ない選手でも優勝しているケースは多いです。
むしろ指摘したいのは、複数回優勝者の多さ。毎年、同じコースで行われるマスターズは、やはりオーガスタナショナルGCと相性の良いゴルファーが有利といえそうです。またコース攻略、試合運びなどにおいて経験が必要とされていることも見逃せません。