“祭りの後” 戦前は苦戦を予想していたが・・・
この日は故・橋本真也さんの3回忌。橋本さんが呼び込んだのか、会場には超満員のファンが集結した |
7月11日、東京・後楽園ホールで行われた『ハッスル・ハウスvol.26』。大会直後の率直な感想がこれだった。ハッスルが長年に渡って積み重ねてきた全ての要素が、見事に噛み合い、それはパッケージプロレスとして前例のない出来栄えとなったのではないだろうか。
まず、この日のハッスル・ハウスには幾つかのテーマがあった。
体制的な側面では、新体制の本格稼動が挙げられる。これまでハッスルを運営してきたドリームステージエンターテインメント(以下、DSE)から、全ての権利を移譲し、ハッスルエンターテインメント(以下、HE)という新会社での再出発。もちろん、これ自体は既報の通りだが、その新体制に、雑誌『ファミ通』でお馴染み、エンターブレイン社の資本参加やパチンコ大手、京楽産業の継続スポンサードが加った。また、関係者の話によれば、今大会から旧DSEのPRIDE系スタッフ(PRIDE FC WORLD WIDE)の手伝いにも頼らず、受付や物販といった細部に至るまで、実質的に全てを自前で運営したという。
そして、イベント的側面からみれば、先月17日に開催されたハッスル上半期最大のビッグマッチ『ハッスル・エイド2007』後、初のイベントであり、この日は初期のハッスルシリーズを支えた国民的人気プロレスラー、故・橋本真也さんの3回忌でもあった。これらの要素を加味すれば、今大会がいかに落とせないものであったのかは容易に想像がつく。
しかしながら、大会前は正直、苦戦を予想していた。
それは、HEが先のハッスル・エイドに並々ならぬパワーを注力していたこと。エイド前は連日に渡って開かれる記者会見やリリース、サプライズの一報がメディアを賑わせた。これ自体は、DSE時代からハッスルのプロモーションの一つとして、彼らが得意とする方法でもあるが、これらは、あくまで、ビッグマッチに向けたものであり、同じことを半永久的に続けることなど到底不可能。勿論、そこにはHEスタッフによる夜を徹した作業や準備、苦労や苦悩の日々といった属人的な問題もあるだろう。
だからこそ、“祭りの後”とでも言うべきか、あれだけのビッグイベントを作り上げた後、スタッフのモチベーションが少なからず下がるのは致し方なく、プロモーションの観点から見ても、エイドに比べれば情報量は当然落ちている。決して話題作りを怠っている訳ではないが、エイドの煽りを受け、“今回のハウスは盛り上がっていないのでは?”という錯覚すら起こしてしまうのだ。
それだけではない。ハッスル・エイドをどう解釈するのか。成功なのか、失敗なのか、未だに整理がつかず、これが今回の大会にどれほど影響を及ぼしたのかも推量できずにいた。
エイドに関しては長所・短所がはっきりし過ぎていたのだ。オープニングから高田総統が川田利明とチャゲ&飛鳥を熱唱するサプライズで幕を開け、グレート・ムタの登場、インリン様との絡みは近年屈指の名場面となり、メインでは天龍源一郎がHGと痛みの伝わるシングルマッチで対戦。試合後には天龍のモンスター軍追放という予告編まで付く充実した内容となった。それでも、さいたまスーパーアリーナを満員の観客で埋めることはできず、閑散とした空気はイベントの熱を奪っていく様でもあったからだ。