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初のオリジナル曲はファンクスの『スピニング・トーホールド』だった。

プロレスと音楽を融合させた『スカイハイ』

プロレス観戦の楽しみのひとつに選手の入場シーンがあります。新日本プロレスの2014年1月4日の東京ドーム大会では人気ロックバンド・メガデスの元ギタリスト、マーティ・フリードマンが棚橋弘至のテーマ曲『HIGHT ENAGY』を生演奏して話題になりましたが、テーマ曲は選手のキャラクターを印象付ける意味で非常に重要なものです。その曲がかかると自然に手拍子や選手のコールが起こり、会場は一気にデキ上がるのです。

今では新人選手でもすぐにテーマ曲が付きますが、最初にこの演出を取り入れたのは国際プロレスを放映していた東京12チャンネル(現・テレビ東京)でした。同局は1974年9月の国際プロレス中継の放映スタートに際して外国人のエースとして初来日した“スーパースター”ビリー・グラハムの入場の際にカール・アンダーソンが歌う『ジーザス・クライスト・スーパースター』をかけたのです。これは当時の国際プロのエース、マイティ井上のアイデアでした。井上はドイツ・ハノーバーのトーナメントに出場した時に選手それぞれにテーマ曲が付けられていたことを東京12チャンネルのプロデューサーに話したのがきっかけでした。ちなみに井上がハノーバーで使っていた曲は、ちあきなおみの『四つのお願い』だったそうです。

その後、77年2月に日本テレビがイングランドのバンド、ジグソーの『スカイハイ』を“仮面貴族”ミル・マスカラスのテーマ曲として使用。曲とマスカラスのキャラクターがマッチして爆発的なマスカラス・ブームが起こり、プロレス・テーマはにわかに注目されるようになりました。『スカイハイ』は、元々は映画のテーマ曲で、75年にリリースされてアメリカではビルボード3位になったヒット曲ですが、日本ではマスカラスのテーマ曲として浸透して、77年のオリコンのシングルチャートで最高2位を記録しました。下降線だったマスカラスの人気を『スカイハイ』が復活させ、マスカラスが活躍することで『スカイハイ』が売れるという相乗効果が生まれたのです。選曲したのは当時の全日本プロレス中継のディレクター、梅垣進氏でした。

「僕は当時、ジャンボ鶴田と年齢が近いこともあって気が合いまして、ふたりとも音楽が好きだったことから、ジャンボとアブドーラ・ザ・ブッチャーが試合をした時(75年10月30日、蔵前国技館)に、ジャンボ入場の時だけフランスのディスコ・グループ、バンザイの『チャイニーズ・カンフー』を使ってみたのが実はテーマ曲の最初でした。その後、シリーズの予告編をやるならBGMがあった方がいいだろうということでマスカラスの予告編に『スカイハイ』を使ったんです。あの曲は中継で博多に出張した時にディスコでかかっていたんです。それがパッと頭に浮かんだんです。あそこからプロレスと音楽の融合が始まりましたね。初期の頃は選手のオリジナル曲は無いので選手や映像のイメージにマッチした曲選びというのは神経を使いました」と梅垣氏は言います。

初のオリジナル曲は『スピニング・トーホールド』

新日本プロレスで最初にテーマ曲を使用したのは、もちろんアントニオ猪木です。76年6月26日に日本武道館で猪木と格闘技世界一決定戦を戦ったプロボクシング世界ヘビー級王者モハメド・アリが自身の伝記映画『アリ・ザ・グレイテスト』のメイン・テーマで、ラテン・ファンク系バンドのマンドリルが演奏する『アリ・ボンバイエ』を猪木にプレゼント。77年夏から猪木のテーマ曲として使われるようになりました。

初の選手オリジナル曲はドリー&テリーのザ・ファンクスの『スピニング・トーホールド』です。この曲は日本のロックバンド、クリエイションのリーダーでプロレスの大ファンだった竹田和夫がファンクスに捧げた曲。77年暮れの『世界オープン・タッグ選手権』から使用されましたが、特に12月15日に蔵前国技館でアブドーラ・ザ・ブッチャー&ザ・シークを撃破して優勝した時に流れたシーンは、多くのオールドファンの記憶に残っていると思います。

テリーがザ・ブッチャーに右腕をフォークで刺されて大流血して途中で戦闘不能になりながらも、ブッチャー&ザ・シークに2人掛かりで痛めつけられる兄ドリーを見てリングに戻り、最後には反則勝ちながらファンクスが優勝を決めました。そして『スピニング・トーホールド』がかかると、蔵前国技館は大きな感動に包まれました。入場時だけでなく、試合後に勝者のテーマがかかったのは、この時が初めてでした。この後、ファンクスは少年少女たちのスーパーヒーローとして一世を風靡します。

今やプロレスに欠かせない選手のテーマ曲。曲がかかったらその選手の顔とファイトが浮かび、自然にコールや手拍子をしたくなるに違いありません。そう、プロレスは五感をすべて使って楽しむものなのです!



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