では、何に対して何を祈っているのでしょうか?実は私もよく知りません。だって、大体お祈りごとは何をお願いしたかなんて人に言わないものだし、聞くのも野暮ってもんです。だから、私が感じる範囲での解釈になります。
怪我を避けるために、祈る
プロレスラーは体を鍛えているといっても、やはり怪我は付きもの。どうにもならないことは、祈るのみ |
特に怪我。プロレスラーは体を鍛えているといっても、やはり怪我は付きもので、小さな技でも受け身のタイミングがずれれば、思わぬ大怪我につながります。これらは、リングでは鍛えても防げない事もあるだけに、努力以外の力にも頼るのです。
ある時、GAEAでは試合中に怪我が続いたことがありました。それからは誰から言い出したわけでもなく、開場前のリング上には、コーナー四方に塩と酒がまかれるようになりました。ビッグマッチの時は、リング下の中央に塩を大量に盛り、大会の成功を願ったりもしました。
これはリングという神聖な場所を清めることと、選手の気持ちを引き締めることにもなっていたと思います。ちなみにお酒は乾くとベタベタするので、試合前には拭いていましたが、拭き残しがあった場合は、むしろお酒のせいで怒られたこともありました。
選手のお祈りの仕方もそれぞれでした。控室の隅で祈る選手や、普段つけているパワーストーンや自分がお守り代わりにしているものをリング直前まで握り締めている選手もいたり。浜田文子選手は、ロープをくぐる前に胸に十字をきっていました。
塩や酒が撒かれるわ、合掌してお辞儀をする選手がいるわ、十字を切る選手もいるわで、きっとリングでは世界中の様々な神様がリングを守ってくれていたんだと思います。
「お願いする前に練習しろ」
長与さんは、試合の準備でテーピングを手首に巻く際、テーピングにペンで何かを書いて、その上にテーピングを重ねて巻いていました。GAEA旗揚げから全試合でやっていたのですが、何を書いているのかを知る選手はいませんでした。かくいう私も、新人時代はうやうやしく入場前に頭を下げたりしていたのですが、そんな頭の中は空っぽでした。しいていうなら“ドロップキックが高く飛べますように”とお願いしたぐらいでしょうか。でもそんな技術的なことは、神様でさえ「お願いする前に練習しろ」と言っていたと思います。また、祈ると同時に“大丈夫、私は出来る”と、自分に言い聞かせていた選手も少なくないと思います。
選手がリングへ上がる前に、目をつむり手を合わせるのは、極度の緊張感や不安を断ち切り、自信を持ってリングに上がるためでもあったと思います。リング上では豪快な選手達も、実は繊細な一面があるんです。
今回の謎の解明、お役に立ちましたでしょうか。それではまた次回。
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