探偵ファイル・山木、柳龍拳を挑発
ただ一方で、詐欺ではないのかと関係と目くじらをたてるより“幸福なマクロコミュニティ”の共同幻想であると受け取っておくのが、“大人の配慮”ではないかとも思う。“かたる”師匠側とその思想を盲目的に受け入れたいと願う弟子の側に、それぞれメリットがある共犯関係なのだから、そこには誰も被害者はいない。一般常識を持つ人間は騒ぎ立てずに、ただ関わらずに遠ざけておけば事は済む。だが、この“幻想”を無惨に叩きつぶして見せようと動き出した仕掛け人が現れた。毎回体を張った無茶な挑戦企画や、一般媒体では公開できないタブー系の裏ネタ記事で多くのファンを持つバラエティサイト「探偵ファイル」の元編集長・山木陽介だ。
2006年の10/6付の「探偵ファイル」で山木は、妄言満載の柳龍拳のHPをおちょくる『ヒクソンも逃げ出す武術家とは?』という記事を掲載(現在は削除)。気功、開運除霊・人生相談・霊視鑑定というオカルト的要素を売りにしながら、その実力を証明するためにPRIDE出場を志願し、自らの首に百万円を賭けて他流試合を行うと宣言しているそのドンキホーテぶりをぶった斬った。
世の有象無象をシニカルな文章で嘲笑する「探偵ファイル」的には、そこまでは通常メニューだったわけだが…この件に関しては先があった。返す刀で、なんとその柳の提唱する他流試合に名乗りをあげて見せてしまったのである。
そもそも、山木は趣味でキックジムに通い、探偵ファイルの企画とはいえ、いきなりタイのムエタイのメッカであるラジャダムナンスタジアムでプロ選手と戦ったりする、格闘技実践派の記者だった。また「探偵ファイル」の連続企画として、一般応募で募った素人(武器使用も有効)から、現役のプロ格闘家に到るまで、来る者拒まずの姿勢でストリートファイトを繰り広げるというシリーズ「Holy Land」で名前を売ってもいる。いわば、柳への挑発は、そもそも彼との他流試合を念頭に置いた上での伏線だったのかもしれない。
この山木の過激な挑戦の後ろに控えていたのが岩倉だった。多彩な格闘技経験と指導歴を持つ彼は、百本にわたる「Holy Land」シリーズの、いわば技術顧問的存在であり、当然この柳との対決でも山木の後ろに控えて進行を見守る立場にあった。
地下格闘技の帝王、地上侵攻作戦開始!? (4)に続く