因縁だらけの次期王座挑戦者決定戦

ヒカルド・アローナvsクィントン・ランペイジ・ジャクソン
試合後のリング上。事態を把握し切っていないようなアローナの朦朧とした表情が“衝撃”の強さを物語る
その絵に書いたような一発逆転劇の裏には、ある秘密が隠されていた。

舞台となったのはPRIDE-GP二回戦のスペシャルワンマッチ、ヒカルド・アローナvsクィントン・ランペイジ・ジャクソン戦である。二人は強豪ぞろいのPRIDEミドル戦線でも有数のトップクラスのファイターであり、海外などではむしろ半ば結果の見えたGP本戦の4カードより、このカードの方に注目するファンも多かったようだ。

この対戦がいわゆるGPの“お添え物”的ワンマッチに留まらなかったのにはいくつか理由があるが、一番に挙げられるのはこの試合に、現在負傷欠場中のPRIDEミドル級チャンピオン・ヴァンダレイ・シウバへの挑戦権が賭けられたからだろう。

昨年開催されたPRIDEミドル級GP決勝戦でシウバとランペイジは既に対戦済みである。本来なら、直接対決で敗れたランペイジがたった半年でリマッチのチャンスを与えられるということはあまり考えられない事態である。

だが、DSEにはあえてランペイジをトップコンテンダーの一人に据えなければならない理由があったのである。

前回の対戦で、ランペイジはハーフガードから強烈なパウンドで、あわやTKO勝ちのチャンスを掴んでいた。にも関らず、試合を裁いた島田レフェリーはその攻撃の最中にブレイクを命じ、状況を逆転させてしまたのである。ウ゛ァンダレイの消極的態度に膠着誘発のイエローカード提示するという、取って付けたような理由が示されてはいたものの、通常攻撃続行中の選手が居る場面でブレイクが的応されるのは異常である。

この極めて不可解な“事件”によって、スタンドに戻されたシウバは一気に息を吹き返し、ランペイジをTKOに下す大逆転を演じている。攻めている真っ最中に試合をリセットされたランペイジにすれば、不条理と言う以外ない展開であった。たった半年でそのランペイジに再戦のチャンスが提供された背景には、この裁定に対する“損失補填”的なニュアンスがあったとしても不思議はない。

一方、対するアローナにも遺恨と呼びたくなるような、無念のエピソードがある。

彼も昨年のミドル級GPにエントリーされたメンバーのひとりであったのだが、来日直前の練習中に右足カカトを骨折、来日しながら欠場という無念に泣いているのだ。

その幻の一回戦の対戦相手がランペイジだったのである。一回戦にはアローナの代打として、急遽チームメイトのムーリロ・ブスタマンチが出場したが、僅差の判定でランペイジの逃げ切りを許している。GP開幕前には、優勝候補の一角に挙げられていたアローナだけに、悔やんでも悔やみきれない経験であっただろう。

シウバ再戦に燃えるランペイジか、それとも汚名返上に賭けるアローナか、ミドル級戦線屈指の好カードは、お互いの複雑な背景を孕んでスタートしたのであった。