「THE BATTLE FIELD ZST 2」
 2003/03/09
 [ZST] ZEPP東京



 フェザー級5分2R
 △梅木繁之(SKアブソリュート)
 △矢野卓見(烏合会)
 ex-R 判定1-0
 


 



近、僕が最も試合を楽しみにしている選手を紹介しよう。

梅木繁之。身長175センチ、65キロ。かなりのやせ形である。団体にもよるが、クラスはライト級かフェザー級。それでも対戦選手の体格と競べるとやはりひょろっとした印象が否めないのは、色白な肌と妙に長い手足のせいかもしれない。その上、顔もかなり縦長で、コケた頬にきょとんとした点目、ムーミンにでてくるス二フくんを思い出すのは僕だけではないはずだ。(要するに憎めない顔だ…とフォローしておけばいいか。)それに蓬髪。金田一耕助かなんかを思わせたりもするが、孫の方のように後ろでは括ってはいない。

年齢は1977年生まれの26歳。新宿スポーツ会館に集まるサンビストが結成した総合格闘技集団skアブソリュートの新鋭…というか、若手の方ではあるのは確か。パシリとか、下っ端というような言葉も微かに頭をよぎったりもするが、決してそんなことはあるまい。まああくまでルックスからするとそんな感じだが、多分違う、きっと違う。それどころかなんか買いに行かせたら、まるで違うものを買ってくるタイプ? いやいや、人をルックスで決めつけてはいけない…でもそんな感じ。

では当人の言い分を聞いてみよう。
「えー、できれば勝ちたいんですけど、下っ端なんで、勝ち負けにはこだわらないですねえ。社会人なんで仕事が第一ですよ。会社では怒られてばっかりなんで、目標は? 会社で叱られないこと? あ、立派な社会人になる事ですね。格闘技一生懸命やってる人には悪いんですけど、ケガが無い程度にやって、インパクトを残せる試合がしたいですね。独り暮らしなんで、誰も助けてくれないしね。格闘技は二の次って感じで」
うーむ…やはり外見は人を語るのかもしれない…。

の試合ぶりは、こんな感じだ。
大抵、構えは中国拳法風に半身。片手は奇妙な形に宙に振り上げられて、もう片手は前に拳を握るでもなく、所在なげにゆらゆらと半開きで突きだされている。腰は中腰で、脱力しており、表情からも態度からも、およそ「やる気」というものは伺えない始末。焦れた相手がローキックでも繰り出そうものなら、平気で腿を蹴られて腰がかっくんとなってしまう。

これはかなり怖い。無抵抗の怖さだ。
でも弱いだけのヤラレキャラでもない。いきなりソバットやバックブローを繰り出したりもする。いきなり発作的に出す。それも結構当たらない。
それでも表情は相変わらずスニフくんだ…やっぱり怖い。

元々がサンビストなので、スタンドより関節技が得意なのかもしれない。
そういえばいきなり頭をマットに付けた状態で、逆立ちになってくるっと回ってみせたりもする。どうやらブレイクダンサーのまねっこ見たいな感じで、相手の足を取りにいったらしい。何となく、藤原組長のヘッドピンシザースを思い出したり。でも、毛がある分、多分梅木のほうが痛いはずだ。よく除けられて、蹴られてるし(笑)

実際のところ、なんでそんな動きをするのか、したいのか、まるで分からない。サンボとは言うものの、こんな動きはどう考えてもおかしい。
理屈にない動きなのだ。

その件に関して、skアブソリュートのリーダー松本氏はこう言っているという。「梅木には基本をやらせても駄目なんですよ。逆に好きにやらせるしかないんで。あれはあれで完成したものなんです」と。…確かに、基本があるようには思えない。

だが、それでも梅木はイロモノにすぎなくもない。
(あ、ニホンゴがおかしい?)
時たまだが思い付いたようにパンチの打ちあいに飛びだしてきたり、足の取りあいになって不思議な形に絡みあってる姿を見るにつけ、「多分この人は一生懸命、何か俺の分からないことをやろうとしている」というのは何となく伝わるからだ。
何かって、格闘技?
いや、予断はよくない。命懸けのダンスかもしれないし、もしかしたら無意味に危険な手旗信号で、客席の誰かにサインを送っているのかもしれない。にもかかわらず、梅木の試合は格闘技の文脈でも楽しめるのだから、彼が何か別の事をしようと思っているのであっても、とりあえず我々は気にしなくてもいいのだ。