「INOKI BOM-BA-YE 2002」
 2002年12月31日(火)埼玉・さいたまスーパーアリーナ/FONT>






 
第4試合 K-1ルール 3分3R
×ゲーリー・グッドリッジ(フリー)
○マイク・ベルナルド(レオナルド・ボクシング・ジム)
1R 2'21" KO

年の猪木祭りが終わった。

総合に混じった二つのK-1マッチ。ベルナルドVSグッドリッジ、アビディVSランペイジ。ともにK-1の舞台で辛酸をなめさせられたキックボクサー達のリベンジマッチである。

井館長の号令一発、K-1ファイターは全て総合を目指すべしという風潮が支配した2002年だが、けっして他流試合はプラスばかりではない。それを立証したのがベルナルドの今年の不調であるように思えてならない。

かつてベルナルドは「総合なんか必要ない。K-1ファイターであることに誇りを持っている」と宣言していた。しかし、いきなり無縁のはずの闘いに駆りだされたベルナルドは、短期間の付け焼き刃な練習で去年の猪木祭りに参戦。無意味としか言い様のない高田延彦戦で無様な戦いぶりを晒した。元々ベルナルドはボクシングベースの選手である。基本的にパンチの距離感で勝負を進めた時に強さを発揮する。そんな彼がタックルありの距離で闘えるわけもないし、強いパンチも打てるわけがない。

また対総合系選手では、クリンチで止まらない総合系特有の突進力がある問題となる。首相撲がご法度のK-1ファイターはクリンチになれば、立って待つ。両手を広げ「早くブレイクしろよ」とばかりに棒立ちでいる姿もよく見る。

だが総合のファイターは相手を押し倒してナンボの商売である。組んだ後、ひたすら相手を押し倒すために突進してくる。前に出るスピードも圧力も違う。当然、そんな選手を相手にしたら、K-1の感覚は通じない。その上、下手をすれば崩れた後から、反則のパンチが雨あられと降ってくる恐れすらある。実際ボブ・サップは、グラウンドに崩れた中迫にパンチの雨を降らせ、踏み付けまでやっている。総合出身でも、空手家のシュルトなどは、ルールにあわせて技術を切り替えるが、グッドリッジやランペイジは、グローブが違う程度の認識で参戦してきている選手である。

そんな相手と戦わされたら、K-1ルールであろうが感覚は完全に狂ってしまう。スタンドのコンビネーションは、距離からステップワーク、コンビネーションの強弱、視線と細かい技術を精密機械のようにして組み立てていくものである。

ーストが「彼には技術がない」とサップを悪しざまにののしる気持ちは、そういう組み立てを、問答無用に踏みにじられる怒りから出ているのだ。技術の攻防の中で、芸術をくみたてるアーチストを持って任じるミスターパーフェクトにすれば、その存在を根本から否定されている事になる。対サップでも頑固に自分流を貫き通して二度とも敗れたホーストだが、結果的にはそのサップの故障を誘発して四度目の世界王者に輝いたのは、彼の「頑固さ」ゆえであった気がする。やはり格闘技に本当に必要な物は、ハートの強靱さなのかもしれない。

それと比べるとベルナルドはハートの強い選手ではない。信仰心の篤さは逆に言えば寄り掛かる偶像を求める心理だし、私生活での人間関係もしばしばリングに影響を与える。離婚や、トレーナーのスティーブとの別離など、トラブルがあるたびに彼は別人の様に弱くなる。元々相手のプレッシャーに下がる癖はあったが、この総合系連戦で抜き難い恐怖症に拡大されてしまったとしたら、まさにそれは「他流試合の弊害」である。


は、今回猪木祭りでのベルナルドの戦いぶりはどうだろう?

前回遮二無二突進してくるグッドリッジの突進に押しまくられた反省か、今回は、下がってのカウンターでKO勝利を得ている。結果だけ見れば、十分課題を整理した末の勝利だが、安易に下がる癖を身に付けた代価は、きっとこれからの彼の戦いに悪影響を残す予感がある。本当に技術のあるK-1ファイターと対戦すればわかることだが、カウンター狙いで下がる相手に、その隙をあたえずに畳み込むことの出来る選手が揃っている。はたして、不器用なベルナルドが、再度そこでスタイルチェンジをこなせるかどうか? 大きな疑問符を残したリベンジマッチだった。

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