ミステリー小説/ミステリー小説関連情報

さよなら夢水清志郎(2ページ目)

はやみねかおるの代表作〈名探偵・夢水清志郎事件ノート〉がフィナーレを迎えました。

執筆者:福井 健太

三姉妹の卒業を描く
シリーズ完結編

『卒業~開かずの扉を開けるとき~』
旧校舎の"開かずの教室"の封印が解かれ、40年前の亡霊"夢喰い"の伝説が甦った。名探偵・夢水清志郎が辿り着いた真相とは?
シリーズ最終作『卒業~開かずの扉を開けるとき~』では、中学校で起きた怪事件と三姉妹の卒業(および亜衣の恋愛の顛末)が――シリーズ最大のボリュームで――描かれている。亜衣の彼氏・中井麗一が侵入した"開かずの間"には、内側から大量の御札が貼られており、黒板には「夢喰い」と記されていた。学園の伝説によると"開かずの間"には"夢喰い"が封印されており、かつて1人の学生がそこで忽然と姿を消したという。亜衣たちは真相を探ろうとするが、それを知ることは卒業を控えた彼女たちの"夢"を守ることでもあった。

『そして五人がいなくなる』では中学1年生だった三姉妹は、本書において中学校の卒業式を迎えることになる。そんな時の流れからも察せられるように、このシリーズは一種の青春(成長)小説であり、子供の夢を守ろうとする著者の想いが全編を貫いている。そしてもう1つ――随所にマニアックな小ネタを仕込みつつ、著者がミステリーの魅力を若い読者に伝えてきたことは、ミステリー界における甚大な功績にほかならない。謎解きを軸にした前期、キャラクター寄りの後期という変遷はあるにせよ、このシリーズが育成してきた読者層はすこぶる厚い。かくして〈名探偵・夢水清志郎事件ノート〉は現代を代表するジュヴナイル・ミステリーになり得たのである。

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