北村薫が新境地に挑んだ
シリーズ第1弾『街の灯』
名家の令嬢・花村英子が謎めいた運転手の別宮みつ子とともに難事件に挑む。歴史ミステリー・シリーズ第1弾。 |
2003年に上梓されたシリーズ第1作『街の灯』には3編が収められている。新聞で知った怪事件を解決する「虚栄の市」、暗号解読を扱った「銀座八丁」、上映会中の変死の謎を解く「街の灯」――いずれも謎解きは平易なものだが、昭和初期の令嬢の視点から綴られる(当時の)風俗や価値観はすこぶる興味深く、男勝りの「ベッキーさん」の言動も爽快さを感じさせる。同じ著者の〈円紫さんと私〉シリーズに通じる文学趣味を漂わせつつ、端正な時代小説として楽しめる内容になっているのだ。
トリッキーな着想が冴える『玻璃の天』
思想家が不可解な墜落死を遂げた。英子たちが辿り着いた哀しい真相とは? 第137回直木賞候補作。 |
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