"歴史ミステリ御三家"の一人
ポール・ドハティ

『白薔薇と鎖』
ロンドン塔の殺人は国際的な大事件の幕開けだった。怪老ロジャー・シャーロットが若き日の冒険を語るシリーズ第1弾。
ポール・ドハティは1946年ヨークシャー生まれ。リバプール大学とオックスフォード大学で歴史学を専攻し、博士号を取得してからは歴史教師を経てロンドンの高校で校長に就任した――という"歴史のプロ"である。1985年に"The Death of a King"でデビューして以来、現在までに80冊以上の歴史ミステリーを発表しており、作品の舞台は中世のロンドンや古代エジプトなど多岐に渡っている。〈修道士カドフェル〉シリーズのエリス・ピーターズ、〈密偵ファルコ〉シリーズのリンゼイ・デイヴィスと並び称される"歴史ミステリー御三家"の一人だが、精力的な創作ぶりでは群を抜いていると言えそうだ。その作品群が(遅ればせながら! ようやく!)邦訳されるようになった現在こそ、日本の読者がドハティを発見する絶好のチャンスなのである。

14世紀イギリスを舞台に
検死官と修道士が大活躍

『毒杯の囀り』
"歌う廊下"に守られた貿易商が毒殺され、唯一犯行が可能だった執事は首吊り死体となって発見された。アセルスタン修道士が辿り着いた真相とは?
ドハティは多くのシリーズを持っているが、最初に邦訳された"それ"は〈アセルスタン修道士〉シリーズだった。14世紀のロンドンで検死官と書記の修道士が探偵役を務める本シリーズは、現在までに『毒杯の囀り』『赤き死の訪れ』の2冊が邦訳されている。前者は貿易商が密室で毒殺され、容疑者とされた執事は屋根裏で首を吊っていた――というストーリー。後者は怪しげな手紙を受け取ったロンドン塔の城守が殺害され、同様の事件が繰り返されるという物語だ。いずれもトリックは他愛のないものだが、中世の雰囲気を楽しめる佳作であることは確かだろう。

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