日本が激動の時代を迎える
シリーズ最終作『鷺と雪』

『鷺と雪』
台湾に居るはずの男はなぜ写真に写ったのか? そして日本は何処へ向かうのか? 時代の節目を描くシリーズ完結編。
北村薫の最新作にして〈ベッキーさん〉シリーズ最終巻にあたる『鷺と雪』では、名門家の子爵が暗黒街のルンペンに紛れていたという「不在の父」、老舗和菓子屋の子供が夜の上野に居た理由を探す「獅子と地下鉄」、写真のトリックを解明する「鷺と雪」の3編が楽しめる――が、本書のクライマックスは謎解きではなく、3冊にわたって培われてきた"予兆"の炸裂にほかならない。著者は本シリーズにおいて、世俗から離れた令嬢の視点に立ち、五・一五事件から二・二六事件までの四年間を活写してみせた。謎の提示と回収だけではなく、その背景に"時代"を織り込むことで、本シリーズは歴史ミステリーとしての高い完成度を獲得している。たとえば「不在の父」の一節が表題作の伏線であるように、全編がクライマックスに収斂するように計算されているのだ。

あるいはこうも言えるだろう。刊行順にシリーズを読み進めることで、読者は作中で醸された"時代の空気"の変化を察知できる。その感触こそが最大の眼目なのだ。そこに何を感じ取るかは、もちろん個々の読者に委ねられている。

【関連サイト】
〈著者インタビュー〉ベッキーさんが、われわれに託すもの文藝春秋公式サイト内の北村薫インタビューです。

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