奇病を活写したデビュー作
主婦の愛人たちが怪死を遂げていく。濃密な愛憎劇の果てに浮上した真相とは? 第32回メフィスト賞受賞作。 |
真梨幸子は1964年宮崎県生まれ。多摩芸術学園(現在の多摩美術大学)映画科卒。会社勤めを経てテクニカルライターに転じ、2005年に『孤虫症』で第32回メフィスト賞を受賞してデビュー。ペンネームの由来はザ・タイガースのデビュー曲「僕のマリー」だという。『えんじ色心中』『女ともだち』『深く深く、砂に埋めて』『クロク、ヌレ!』など――人間の悪意や欲望を軸として――精力的な創作を続けているが、第6長編『殺人鬼フジコの衝動』はとりわけ印象的な物語と言えそうだ。一家惨殺事件で生き残った10歳の少女が"伝説の殺人鬼・フジコ"に変貌し、死刑に処せられるまでを綴った本作では、ハードなサスペンスとトリッキーな趣向を一度に楽しめる。"殺人者の手記"テーマの秀作なのである。
次のページでは『ふたり狂い』を御紹介します。