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ディープ・インパクトな海外小説

シモネタ満載で、展開は奇妙奇天烈ですが、独特な世界に魅了される『フロイトの函』。ページ数は少ないけれど鮮烈な印象を残す『ドライブ』。その個性が読み手に強い衝撃を与える海外小説をご紹介します。

執筆者:石井 千湖


シモネタ満載で、展開は奇妙奇天烈ですが、独特な世界に魅了される『フロイトの函』。ページ数は少ないけれど鮮烈な印象を残す『ドライブ』。その個性が読み手に強い衝撃を与える海外小説をご紹介します。

シモネタ満載!奇妙奇天烈な夢の函デヴィッド・マドセン『フロイトの函』

フロイトの函
原題は「A BOX OF DREAMS」。めくるめく夢の世界へ読者を誘います。
……いざ牛ヒレ肉のポワレ・ヴィレット風をフォークで口に運ぼうとしたまさにそのとき、ふいに車内灯が消え、ぼくは突如として漆黒の無に放りこまれた。

という一文ではじまる『フロイトの函』。ロンドン生まれでローマに長いこと留学していたという以外、本名も詳しい経歴も謎の作家、デヴィッド・マドセンの邦訳第二弾です。2004年に訳出された『グノーシスの薔薇』はローマ教皇がゲイだったり、レオナルド・ダ・ヴィンチがマッドサイエンティストだったり、ラファエロが鬼畜だったりする設定がすごかったですが、今回もイマジネーション大暴走。

主人公の〈ぼく〉は、牛ヒレ肉のポワレ・ヴィレット風を食べる前に何をしていたかも、自分が何者かも、記憶がない。いつの間にか汽車に乗っていて、向かいの席には老紳士が。紳士はジークムント・フロイト博士と名乗ります。あの夢判断で有名なフロイトとは同姓同名の別人だけれども、やはり精神分析医で『夢判断』という著書があるという。そこから〈ぼく〉とフロイト博士の珍道中がはじまるのですが……。

博士に催眠術を受けて目覚めるとなぜかぴちぴちのブリーフ一丁になっていたり、汽車を降りてたどりついた伯爵の館でなぜかヨーデルの世界的権威として講演をすることになったり、なぜかパンばかり食べさせられたり。展開に脈絡がなさすぎて茫然としてしまうのですが、ペダンティックな雰囲気と随所に織り込まれる爆笑シーンに引きずり込まれて、ページをめくる指が止まりません。

果たして〈ぼく〉は何者なのか? 目の前で展開している出来事はどこまで現実なのか? 魅惑的な謎が入れ子状になった夢の函。開けたらハマってしまうかもですよ。

次ページではページ数は少ないけれど鮮烈な印象を残す『ドライブ』をご紹介。>>

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