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ディープ・インパクトな海外小説(2ページ目)

シモネタ満載で、展開は奇妙奇天烈ですが、独特な世界に魅了される『フロイトの函』。ページ数は少ないけれど鮮烈な印象を残す『ドライブ』。その個性が読み手に強い衝撃を与える海外小説をご紹介します。

執筆者:石井 千湖

小さな挿話が醸しだす悲しみジェイムズ・サリス『ドライブ』

ドライブ
わずか191ページながら印象に残る小説。
あとがきまで含めて191ページ。『ドライブ』は1冊の小説としては、かなり薄いほうだと思います。

主人公の名前もシンプル。車を運転するのが仕事だからドライバー。本名はわかりません。彼の表稼業は、映画のスタント・ドライバー。裏稼業は、強盗の“逃し屋”。冒頭、ドライバーはトラブルに見舞われています。裏稼業で仲間割れが起こったのです。命からがら逃げ出したものの、気がつくと大事な腕に大怪我を負っていました。彼はトラブルの黒幕を追いますが……。

複雑な生い立ち、スタント・ドライバーになるまでの経緯、恋人との出会いといったことを描写して、なおかつ、ギャングとの争いもある。大長編になってもおかしくないのに、191ページ。ここまで削ぎ落とせるのはすごいですね。

印象に残っているのは、ドライバーの母親のエピソード。ドライバーが子どもの頃、母親は通販でテーブルを買います。ドライバーに食事をさせるのもそこそこに、彼女はうきうきしながらテーブルを組み立て始めるのですが、やがてその表情は悲しげに変わっていくのです。たったそれだけの話なのですが、なんとも切ない。

普通ならば見せ場にするようなシーンがあっさり終わったり、大胆に省略されていたりする一方で、こういう小さな挿話が大事に描かれているところが魅力的です。

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