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上遠野浩平のファンタジック・ミステリー(2ページ目)

上遠野浩平がファンタジックな謎解きを描く〈戦地調停士〉シリーズ。その最新作が4年ぶりに刊行されました。

執筆者:福井 健太

調停士は名探偵

『残酷号事件』
戦地に現れては殺戮を繰り広げる"残酷号"――彼は一体何者なのか? 仮面の"調停士"が大活躍を見せるシリーズ第5弾。
舞台は魔法によって文明が築かれた世界。最高峰の政府組織"七海連合"に属する"戦地調停士"のエドワース・シーズワークス・マークウィッスル(通称"ED")は、人類の誕生前から存在する竜の刺殺事件を解決するため、各国に散らばる容疑者たちを訪ねていく――と、これは〈戦地調停士〉シリーズ第1作『殺竜事件』のストーリーだ。いかなる時にも仮面を外さず、異世界からの漂着物を調べる"界面干渉学"を副業とする、慇懃にして不敵な青年ED。彼の冒険はこうして幕を開けたのである。

最高の魔導師を決める会場で大量殺人が発生する『紫骸城事件』、治外法権の島に逃げ込んだ密室殺人の容疑者を追う『海賊島事件』、呪われた難民街の謎が明かされる『禁涙境事件』などを経て、約4年ぶりに刊行された最新作が『残酷号事件』である。軍の暴虐と戦う不死の怪人"残酷号"の正体を探るEDは、やがて恐ろしくも哀しい真相に辿り着く。真に残酷なのは殺戮行為ではなく、1つの意志が"彼"に与えた運命だったのだ。淡々と綴られた悲劇の感傷とハードな戦闘を両立させているのも、いかにもこの著者らしい"匠の技"と言えるだろう。剣と魔法の世界、容赦のないアクション、青春小説的な切なさ、軽い謎解きなどが配合されたエンタテインメントとして、ファンタジーが苦手な人にこそお勧めしたい1冊なのである。

【関連サイト】
上遠野浩平の世界Wiki…上遠野作品の情報を集めているWikiサイトです。
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