身勝手な殺人者が暴走する
『君が悪い』
身勝手な理由で殺人を繰り返す男。彼の精神は"自分は悪くない"という観念に染まっていた。独特のユーモアに満ちた異色の犯罪小説。 |
偏執狂の連続殺人を冷ややかに描く物語――と書くとシリアスに見えるが、犯人の身勝手さと展開のスピード感を通じて、本作は底意地の悪いブラックユーモアに満ちた"怪作"になり得ている。チープな犯人はコメディアンであり、連鎖的な殺人はいわばシチュエーション・コントなのだ。異常なまでに責任を忌避する竹林は新手のサイコキラーだが、その造形はデフォルメされた現代社会の風刺としても興味深い。ずっしりとした読後感やディープな味わいはないものの、明快なエンタテインメントとしての構成は評価されるべきだろう。とりわけ"黒い笑い"の愛好家にはお勧めの1冊なのである。
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