ミステリー小説/ミステリー小説関連情報

江戸川乱歩と"推理クイズ小説"

巨匠・江戸川乱歩は"推理クイズ小説"の先導者でもありました。その成果をまとめた2冊の文庫本を御紹介します。

執筆者:福井 健太

ミステリー文学資料館の
乱歩関連アンソロジー

『江戸川乱歩と13の宝石』
乱歩が編集長を務めた雑誌『宝石』の傑作選。乱歩の推薦文と未発表小説「薔薇夫人」も併録されている。
1999年に設立されたミステリー文学資料館は――世界的にも極めて珍しい――民間のミステリー専門図書館である。この"資料館"は図書館であると同時に、戦前・戦後の雑誌を対象とした〈幻の探偵雑誌〉〈甦る推理雑誌〉シリーズや〈名作で読む推理小説史〉シリーズなどの編纂を通じて、いわば国産ミステリー史の研究機関として活動している。そんな"資料館"が2007年から上梓しているのが、タイトルに"乱歩"を冠した一連のアンソロジーだ。『江戸川乱歩と13の宝石』に始まる同シリーズからは、雑誌『宝石』と『新青年』の傑作選が2冊ずつ刊行されている。乱歩の知名度に頼った作りと言えなくもないが、収録作のクオリティは総じて高く、当時のミステリーの愛好家には必携モノの好著と言えるだろう。

乱歩が編んだ『推理教室』

乱歩が1959年に編纂した『推理教室』には、13人の作家たちが2編ずつ(仁木悦子のみ1編)書き下ろした"推理クイズ小説"が収められていた。執筆陣の豪華さに加えて、解決編が巻末に密封されるなど、いかにも挑戦意欲をそそる1冊だった――が、刊行から数年で絶版。1986年に河出文庫で再刊されたものの、そこでは6編が割愛されていた。そして20年以上を経た現在、一連の"乱歩"を冠したシリーズで(ようやく)全編が復活したのである。

次のページでは『江戸川乱歩の推理教室』『江戸川乱歩の推理試験』を御紹介します。
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