4年ぶりの長編サスペンス『犯罪小説家』
新進作家と脚本家の出逢いが掘り起こした変死事件。自殺サイトの秘められた過去とは? 巧みな構成と意外性を備えた正統派のサスペンス長編だ。 |
待居が著者の投影であることは想像に難くないが、そこへ小野寺が絡むことで物語は奇妙なねじれを見せていく。自殺サイトの過去を調査する今泉もまた――自殺志願者たちの欲求に直面することで――己の心の暗部に対峙することになる。待居と小野寺の感性の差が生み出す不穏なムード、リーダビリティの高さ、印象的な結末などを兼ね備えた良質のサスペンス。『犯人に告ぐ』のような警察小説ではないが、純度の高いサスペンス小説ゆえに(むしろ)本来の持ち味が出ているとも言えそうだ。本書に込められた"企み"には一読の価値がある。
【関連サイト】
・【週末読む、観る】…MSN産経ニュースサイト内の『犯罪小説家』紹介ページです。