記憶喪失のヒロインを描く
異色の鉄道サスペンス
オーストラリア横断列車で乗客が殺された。容疑者となった記憶喪失の「わたし」は終点までに真犯人を突き止められるのか? |
文庫本の目次を見れば解るように、物語は列車とともに進行している。オルバリーを出発した列車はメルボルンやアデレードを経て、終着地のパースへと突き進んでいく。ちなみに「コニス・リトル」は英国版の名義で、米国版には「コンスタンス&グウィネス・リトル」と記されている。オーストラリア生まれ、ニュージャージー州育ちの姉妹による合作ペンネームなのだ。姉のコンスタンスは1899年生まれ、妹のグウィネスは1903年生まれ、本作の刊行は1944年――と書くと古そうに見えるが、シンプルさとスピード感は現代風のミステリーよりも軽快に感じられる。キャッチーな舞台とヒロイン、テンポ良く繰り出される謎と解決、爽快な読後感などを備えた快作なのである。
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