リフォーム詐欺や介護施設の虐待、老夫婦の無理心中事件など、お年寄りをめぐる痛ましいニュースはあとをたちません。小説のなかでも高齢化社会の問題はますます重要なテーマになっていくことでしょう。

ということで、今回は高齢化社会における家族の関係に切り込んだ東野圭吾の最新作、『赤い指』を紹介したいと思います。

平凡な家庭の崩壊劇

赤い指
『容疑者Xの献身』につづく、直木賞受賞第1作
会社員・前原昭夫の家は妻の八重子、中学生の息子・直巳、そして昭夫の母・政恵の四人家族。ある日、直巳が自宅で7歳の少女を殺害。昭夫と八重子は必死に隠蔽工作をはかりますが……。前原家の状況を昭夫の視点、捜査側の状況を警視庁捜査一課の刑事・松宮の視点で追っていきます。

嫁姑問題のこじれが原因で、父が倒れても、認知症になって母が介護に苦労していても、実家に寄りつかなかった昭夫。父が死に、ひとり暮らしになった母がケガをして歩行が不自由になったため、妻を説得し同居をはじめます。ところが、政恵は認知症の兆候を見せるようになるのです。昭夫は日々八重子に不満をぶちまけられ、だんだん家に帰るのがイヤになり、わざと残業するようになる。そんなときに事件が起こったのでした。

一方、松宮は所轄の練馬署の刑事で従兄の加賀恭一郎と組んで、事件を捜査することになります。松宮は末期癌に冒された伯父を尊敬しており、頻繁に病院を訪れている。なのに実の息子である加賀は、一度も来ない。なぜ、といぶかしんでいたときに、仕事で顔を合わせることになった。松宮の心境は複雑です。加賀は感情をおくびにも出さず、事件の真相に迫ります。

もし、昭夫や八重子の立場だったら……続きは次ページへ>>