インチキ霊媒師なのに爽快!井上夢人『the TEAM』
ウェルメイドなユーモア・ミステリー。 |
『the TEAM』は、そんな逆転の発想が面白いユーモア・ミステリーです。
テレビで人気の霊媒師・能城あや子。盲目で難聴の彼女の目や耳になるのは、完ぺきに 気配を消して尾行し、痕跡を残さないで家に忍び込むことができる賢一と、ネット上の情報収集に長けていて、ハッキングまでこなす悠美。3人にブレーンとしてあや子のマネジメントを担当する昇治を加えた4人が“チーム”で活動しているのです。もちろん、誰にも知られないように。
インチキ霊媒師のはずが、いつも結果として相談者の周囲で起こる怪現象の謎を合理的に解いてしまい、意外な真実まであぶりだす。そこが爽快です。
連作ですが、後半ではなぜ能城あや子が偽霊媒師として活躍することになったのかという事情も明らかに。ラストの潔さも素晴らしい!
賢い執事の活躍が爽快!P・G・ウッドハウス『ジーヴズの事件簿』
探偵小説にも英国小説にも影響を与えた古典。 |
ウースターはジーヴスに頼りながらも、ときどき反抗します。たとえば派手な服を着たり、品のない靴下をはいたり。でも、最後には必ず、ジーヴズの言うことをきく羽目になってしまう。頭のよさゆえに主人に対しても余裕たっぷりのジーヴズと、情けないけど憎めないウースターのコンビが絶妙。
ミステリーのなかの名執事といえば、ドロシー・L・セイヤーズのピーター卿シリーズに登場するバンターなどを思い出すのですが、そのセイヤーズや、アガサ・クリスティーなど、多くの著名作家がウッドハウスに影響を受けているといわれています。そういう意味でも、読みのがせない古典です。
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