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目立ちたくない名探偵?小市民シリーズの謎

かつての自分を捨てて、1人は笑ってごまかし、もう1人は隠れることで平穏無事な高校生活を目指す。ユニークな小市民コンビと甘いお菓子の組み合わせが絶妙な青春ミステリー!

執筆者:石井 千湖


名探偵といえば、奇人変人で目立ちたがりが多いというイメージがありませんか? だいたい大勢の容疑者の前で「さて、皆さん」と自分の推理を開陳するなんて、よっぽど神経が太くなければできませんよね。

さて、皆さん。ここに目立つことを極端に嫌う名探偵がおります。名前は小鳩常悟朗。彼には恋愛関係でも依存関係でもなく“互恵関係”にある少女がいます。名前は小佐内ゆき。2人は高校に入学するとき、ある誓いを立てました。それは「小市民たれ」。周囲に埋没することを願う彼らには、隠された秘密があったのです――。

一風変わった青春ミステリーが大人気。米澤穂信〈小市民シリーズ〉の魅力にせまります!

我らは如何にして小市民を目指せし乎春期限定いちごタルト事件

春期限定いちごタルト事件
小鳩君と小佐内さん初登場。一見、ナイーブな少年とお菓子好きな少女が活躍するほのぼの学園ミステリーですが……。
環境が変わったときは、自分の“キャラ設定”を変えるチャンス。小鳩君と小佐内さんは高校入学を期に、〈完全なる小市民への飛躍〉を目論みます。というと、中学時代までの2人は、小市民じゃなかったのでしょうか。“自分は特別”と思ってるだけだったりして。たいていの若者は自意識過剰ですからね。そんなことを考えながら読み進めていくと、徐々に2人の本性が見えてきます。

同級生のポシェット(懐かしい響き!)はなぜなくなったのか、どうしたら鍋を使わずシンクも濡らさずに美味しいココアが作れるのか、美術部の先輩が残した謎の絵の意味は、いちごタルトと自転車泥棒の行方は……などなど。小鳩君はそれらの謎をついつい解いてしまいます。「ぼくが思うに、これは○○で片がつく」というのが、謎が解けたときの小鳩君の決め台詞。

小鳩君が小市民を目指すにあたって封印したのは、自らのずば抜けた探偵能力でした。ところで小佐内さんはどんな本性を隠しているのでしょう。小柄で地味でいつも小鳩君のうしろに隠れている小佐内さん。彼女が封印しているものが何かは、本書を読んでのお楽しみ!

甘い甘いお菓子と謎がてんこ盛り!夏期限定トロピカルパフェ事件

夏期限定トロピカルパフェ事件
4月に発売されたシリーズ第2弾。シャルロット、アイスクリーム、パフェほか、小佐内さんセレクトのスイーツてんこ盛り。
小鳩君と小佐内さんは1年間慎ましく小市民として生活し、高校2年生になりました。その夏休み。小鳩君は小佐内さんに頼まれたシャルロットとマンゴープリンを買って、彼女の家に行きました。部屋には2人きり。

だけどぼくは、小佐内さんに手を出そうなんて考えたことはなかった。今日までは。

という一文を読んで“ついに互恵関係の2人にも変化が?”なーんて、まんまとドキドキしてしまいました。だって高校2年生で夏休みで部屋に2人きりなんて、ねぇ。もちろん前作を読んでいれば、そんな単純なラブコメみたいな展開になるとは思えないのですが。

小佐内さん作成の〈小佐内スイーツセレクション・夏〉というリストと地図をもとに、なぜか甘いものめぐりをすることになった2人。美味しそうなスイーツの描写がてんこ盛りで、甘党にはたまらないでしょう。合間に、ケーキをめぐる対決や暗号の謎解き、誘拐事件まで起こります。そして事件の裏に隠された真相が解明されたとき、次回作が気になって仕方なくなるはず。

次ページではシリーズ全体の謎にせまります>>


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