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花と屍~特選・桜のミステリー(2ページ目)

もうすぐ桜の季節ですね。気の合う仲間と宴会もいいけれど、読書でバーチャルお花見はいかが? 桜の花が重要なモチーフになっているミステリー小説をご紹介します。

執筆者:石井 千湖

タイトルと探偵の名前、ダブルで桜!篠田真由美「桜闇」(短篇集の表題作)

桜闇
漫画化もされている人気シリーズ、初の短篇集。解説は光原百合。著者による解題や年表が詳しいので、本書から読んでも大丈夫です。
あまりの美貌ゆえ、鬱陶しい前髪で顔を隠している建築探偵・桜井京介が、桜の咲く頃に起こった事件を回想する。シリーズ初の短編集の表題作が「桜闇」です。

「建築探偵」シリーズといえば、毎回ちょっと変わった建物や名建築が舞台になっているわけですが、「桜闇」の場合は枝垂桜が咲く、スペイン風の洋館。著者解題によると旧小笠原伯爵邸をモデルにしたという豪奢な邸宅です。京介は高校生のとき、さらわれるようにしてこの屋敷に連れてこられます。主の老人は、何やらいわくありげな人物。その老主人が京介の目の前で毒を盛られ、ベランダから転落死したのです。

亡くなった老人と美しい妻が、ベランダの上で、桜を見ながら紅茶を飲んでいるときの出来事でした。毒を入れるチャンスがあったのは、老人と妻だけ。すぐ側に小間使いもいて、京介も見ていた。なのに、どちらがどうやって毒を入れたのかがわかりません。老人の身分が特殊だったせいもあり、事件の真相は闇の中へ。京介だけが真相をつかむのですが……。

これぞ“本格”桜ミステリーでしょう、と言いたくなる1篇です。

こんな作品もあります!「桜嫌い」(『ぼくのミステリな日常』所収)ほか

桜
桜の開花、今年は例年より早め?
あと3冊、簡単に紹介します。

・若竹七海「桜嫌い」(『ぼくのミステリな日常』所収)見事な桜が咲くアパートで起こる放火事件。第一発見者は「桜嫌い」を自称する人間だった。桜の花びらが真相へと導く。短篇がリンクして意外なオチがあらわれる連作短篇集の最初の1篇。

・京極夏彦『絡新婦の理』桜ではじまり桜で終わる、「京極堂」シリーズ第5弾。犯人と京極堂が対峙するシーンが見もの。京極さんが女子に好かれる理由が分かるような気がする1冊。事件も登場人物も過去の作品とつながっているので、シリーズを順番に読んだ方がいいと思います。

・歌野晶午『葉桜の季節に君を想うということ』桜は散ったら葉桜になるんですよね。当たり前だけど。2004年版『このミステリーがすごい!』国内編で第1位に選ばれた、何を書いてもネタばらしになる気がする、書評家泣かせの1冊。“さくら”という名の女性も出てきます。

昨年、私が花見に行ったときは、もう葉桜になりかけていました。今年はちゃんと満開のときに見に行きたいものです。もう早い地方では開花宣言が出ているようですが、お花見の計画はばっちりですか? All Aboutの「お花見特集」も参考にしてみてくださいね。

<関連特集>
お花見 - All AboutAll Aboutのお花見特集。オススメの桜の名所から、お花見の楽しみ方まで…。All Aboutガイドが厳選情報をお届けします。

<関連ガイド記事>
海堂尊さんインタビュー『このミステリーがすごい!』大賞を受賞した話題のミステリーにも、桜が出てくるんです。

<関連リンク>
小笠原伯爵邸「桜闇」の邸宅のモデルになった建物。今はレストランになっています。お花見の帰りにどうぞ。
【編集部おすすめの購入サイト】
楽天市場でミステリー関連の書籍を見るAmazon でミステリー関連の書籍を見る
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