「人生銀行」の逆バージョン!?
<DATA>タイトル:『君は永遠にそいつらより若い』出版社:筑摩書房価格:1,470円(税込) |
ところが、『ポトスライムの舟』でナガセが記録していくのは増えた金額ではなく、減った金額。目標金額を達成することにカタルシスはありません。そこが小説ならではの面白さ。
ナガセが自分の時間と交換したお金をどんなものと換えたのか。津村さんはそのディテールを丁寧に積み重ねていく。ドラマティックな出来事は起こりませんが、ナガセや周囲の人々の一つひとつの行動に、笑わされたり、身につまされたり、しみじみさせられたり、はっとさせられる。
読む時間を豊かな時間に換えてくれる小説です。芥川賞受賞も納得。
『ポトスライムの舟』はまだ本にはなっていないので、津村作品に興味を持たれた方は、「女の童貞」を主人公にしたデビュー作『君は永遠にそいつらより若い』から、どうぞ手にとってみてください。
【津村作品について書いた記事】
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