NO FUTURE だけど MUSIC BLESS YOU! 読めば音楽を聴きたくなる青春小説、津村記久子『ミュージック・ブレス・ユー』&山崎ナオコーラ『長い終わりが始まる』をご紹介。

津村記久子『ミュージック・ブレス・ユー!!』

ミュージック・ブレス・ユー!!
<DATA>タイトル:『ミュージック・ブレス・ユー!!』出版社:角川書店著者:津村記久子価格:1,575円(税込)
オケタニアザミは大阪に住む高校三年生。赤い髪と黒いメガネ、カラフルなゴムをはめた歯列矯正器(ブレース)、ほとんど耳と一体化したヘッドホンがトレードマークだ。勉強はできないし、進路は全く決まらない。他人ともうまくつきあえないけど、

音楽があるだけましだと思うのだ。いや、「だけまし」なんて物言いは本当におこがましくて、要するに、音楽は恩寵だった。

なかでもアザミが愛するのはパンクロック。友だちのチユキいわく〈いつもアナザデイなんとかかんとかー、って歌いだしで女に手を焼いているってことばっかり歌う〉タイプの音楽だ。チユキはずっと好きだったオギウエにひどい形でふられる。同じころ、アザミは顔見知りのメイケ君にうちのバンドに入らないかと誘われるが、後から来たロックとは無縁の女の子(バンドの人の質問に対していちいち金平糖のような笑い声を立てていた)にメンバーの座を奪われる。2人は他人(特に異性)から選ばれないことに対して感じるもやもやを分かち合う。

同じようなもやもやを知っている読者は、アザミとチユキを好きにならずにはいられない。まずベタベタしていないガールズトークが魅力的だ。友だちの自尊心を傷つけたやつに戦いを挑む侠気もいい。しかも相手の股間に向かって携帯メールを打つとか、手段が変だ。文化祭で他校の生徒に侮辱された同級生のため、必殺仕事人のようなことまでしたことがある。その出来事が卒業直前に思わぬ交流をもたらす。

そしてラスト。ヘッドホンをしていないアザミが、頭の中で好きな曲のイントロをなぞり、電車に乗るシーンの鮮やかさがあとをひく。怒れる10代だったころ聴いていた音楽を思い出す1冊。

★読み終わったら聴きたくなる曲
ブリンク182 「カルーセル」(『チェシャー・キャット』ヴァージョン)

パンクロックを愛する高校生の次は、マンドリンに夢中の大学生が登場! 山崎ナオコーラ『長い終わりが始まる』