男の夜遊び/ダイニング&レストラン&カフェ紹介

東京おでん専科 vol.03 日本橋『お多幸』(2ページ目)

ホクホクと湯気立つ「おでん」が無性に恋しくなるこの季節。ということで、老舗おでん特集第3弾は日本橋『お多幸』ご紹介。江戸の醤油味の濃い出汁で煮た「おでん」、いわゆる関東炊き(かんとうだき)をどうぞ。

大脇 克浩

執筆者:大脇 克浩

男の夜遊びガイド


素材の味が丁寧に引き出された、まろやかな甘み

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写真の黒い汁から濃い印象を受けるが程よい甘辛に仕上がっている
タネは全て、ふたりで分け合えるほど大ぶり。見た目、味ともに堂々たる貫禄を見せるのが『お多幸』のおでんだ。さぞかし骨太な味わいかと思えば、意外や意外、素材の味が丁寧に引き出され、まろやかな甘みに仕上がっているではないか。

なるほど、大きなタネは濃口醤油と砂糖を昆布と鰹の出汁でのばした創業以来、継ぎ足しで受け継がれた鍋で煮込まれるわけだが、出汁の刺激が食欲をそそり箸が進むのである。この大きなタネには少々濃いめな味わいくらいが丁度いいと納得させられた次第だ。

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人気の牛スジ。常連客からのリクエストで始まった
「ウチは練り物と野菜が中心。昔からオーソドックスなタネしか扱わない」という店長・暮林氏。特に牛スジやキャベツ巻きなどの肉系は味がまろやかな印象。そして大根や里芋、豆腐や篠田巻きなどあっさりとした素材は、甘みの強い出汁が効いて、他店の1.5倍はあるほどのボリュームだが、するりとお腹におさまるのであ。

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値段は書かれてないがどれも100~300円と、驚く程安い
「タネの派手さはないが、例えば豆腐は人形町の『双葉(ふたば)』、練り物は日本橋の『神繁(かんも)』と言ったように仕入れの拘りや仕込みの仕事で勝負しています。通年を通して同じタネ、同じ味を楽しんで欲しい」という暮林氏の思いが、シンプルな食材を料理人の技で、誰もが恋しくなる冬の一皿に昇華させる。
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