50年代:アメリカ映画のベスト5
ALL ABOUT EVE 『イヴの総て』 |
(1950年/アメリカ映画/上映時間:138min/監督:ジョセフ・L・マンキウィッツ/出演:ベティ・デイヴィス、アン・バクスター、ジョージ・サンダース、ゲイリー・メリル、マリリン・モンロー、ヒュー・マーロウ)
・大女優の付き人から、あの手この手で出世してゆくイヴはアメリカン・ドリームの象徴でもあり、頭脳明晰な腹黒い女性と捉えられるのかもしれません。ファースト・シーンで、アメリカ演劇界の最高の栄誉であるセーラ・シドンス賞に新進女優イヴ(アン・バクスター)に与えられるのです。そこまでの道のりを描く、目的のためには手段を選ばぬ抜け目のないイヴの姿に驚愕!そしてラストに第二のイヴの誕生をみせる辛辣なシーンにゾッとさせされます。
ROMAN HOLIDAY 『ローマの休日』 |
(1953年/アメリカ映画/上映時間:118min/監督:ウィリアム・ワイラー/出演:オードリー・ヘプバーン、グレゴリー・ペック、エディ・アルバート)
・当ガイド記事でも何度もご紹介した本作は、ロマンティックなおとぎ話の風情ですが、演出が素晴らしいのは周知のこと。オードリーの魅力と、心に突き刺さるも素敵なラストシーンにもう一度ジーンとしてください。
VERTIGO 『めまい』 |
(1958年/アメリカ映画/上映時間:128min/監督:アルフレッド・ヒッチコック/出演:ジェームズ・スチュワート、キム・ノヴァク、バーバラ・ベル・ゲデス、トム・ヘルモア)
・極度な高所恐怖症を理由に退職した警官が、旧友の頼みで彼の妻を尾行する事になります。奇異な行動を取る女に接近して行く内に二人は恋に落ちるのですが、前半の謎めいたロマンスから女の自殺で、その後どうなるのかと思いきや、髪型こそ違い死んだ女そっくりのジュディに出会うのです。後半の心理的なサスペンスまで、技巧を凝らした演出とバーナード・ハーマンの音楽で紡ぎ上げた極上のミステリー。
12 ANGRY MEN 『十二人の怒れる男』 |
(1957年/アメリカ映画/上映時間:95min/監督:シドニー・ルメット/出演:ヘンリー・フォンダ、リー・J・コッブ、エド・ベグリー、マーティン・バルサム、E・G・マーシャル、ジャック・クラグマン、ジョン・フィードラー)
・既に法廷劇の代名詞となって久しい、アメリカ映画史に輝く傑作ドラマです。元々は高い評価を受けたTV作品で、その脚本・演出コンビによる映画版です。17歳の少年が起こした殺人事件に関する陪審員の討論が始まったのですが、誰が見ても有罪と思えたその状況下で、ひとりの陪審員が無罪を主張した事から物語は動き始めます……。時には感情的に、時には論理的に展開される討論が、次第に無罪判決への流れに変わっていくスリルは脚本のローズの功績でしょう。H・フォンダをはじめ役者陣の充実ぶりも良く、特に最後まで有罪を主張するリー・J・コッブが強い印象を残します。昨年ロシア版の『12人の怒れる男』が公開されましたが、やはり本作には及びませんでした。
SUNSET BOULEVARD SUNSET BLVD. 『サンセット大通り』 |
(1950年/アメリカ映画/上映時間:100min/監督:ビリー・ワイルダー/出演:グロリア・スワンソン、ウィリアム・ホールデン、 エリッヒ・フォン・シュトロハイム)
・映画界内幕モノとしても、ある女のナルシシズム作品としても、ビリー・ワイルダー監督作品としても飛びぬけた面白さと辛辣さを備えた、映画史上に残る名作です。今回第5位の『イヴの総て』と双璧でも、映画のミステリー性と、演出の怖さはこちらが上でしょう。過去にファムファタールの記事でも書いた通り、一種ホラーがかったビリー・ワルダー監督の最高作品です。