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もう一度観たい60年代の名作Best5:欧州編

もう一度観たい70年代の名作映画に続きまして、1960年代のベスト5をお届けします。第一弾は、アーティスティックなヨーロッパ映画から。

執筆者:中野 豊

1970年代の名作映画ベスト5=アメリカ編、ヨーロッパ編、邦画編に続きまして、1960年代のもう一度観たい名作映画のベスト5の第一弾はアーティスティックなヨーロッパ映画から。

今回のシリーズもガイドの趣味で順位をつけますが、参考程度にお考えくださればと思います。その時々で順位が変わりますから(苦笑)。10年間で5作品を選ぶというのは極めて難しく、『男と女』、『シェルブールの雨傘』、『アラビアのロレンス』、『突然炎のごとく』、『去年マリエンバートで』と5作品すべて入れ替えてもいいくらいです。おっとイギリス映画「007シリーズ」がスタートしたのも60年代でしたね。

※物語の結末にまで言及した作品がありますので、ご注意ください。
それでは第5位から……。

第5位 『太陽がいっぱい』

太陽がいっぱい
輝く太陽の下の男の野望を描いた『太陽がいっぱい』
パトリシア・ハイスミスの原作「リプリー」を、当時ヌーヴェル・ヴァーグが台頭してきた前世代の巨匠ルネ・クレマンが映画化。主演に若手二枚目のアラン・ドロンを、ヒロインにマリー・ラフォレを、そして音楽ニーノ・ロータとすべての起用はルネ・クレマンの慧眼でありましょう。

貧しいアメリカ青年トムは、金持ちの放蕩息子フィリップを連れ戻して欲しいと彼の父親に頼まれナポリにやってきます。原作は男色傾向のお話で、マット・デイモン&ジュード・ロー共演の『リプリー』の方が男が男にのめりこむ様がうまく描かれていたけれど、本作は金にモノをいわせ遊びほうけるフィリップにトムは劣等感から次第に憎悪するようになり殺害へといたる、真っ青な海と太陽の輝きとアラン・ドロンの影が絡み合う、サスペンス映画の傑作となりました。

[作品紹介]
・1960年/フランス=イタリア映画/上映時間:122min
・監督:ルネ・クレマン
・出演:アラン・ドロン、モーリス・ロネ、マリー・ラフォレ

第4位 『女と男のいる舗道』

女と男のいる舗道
無感動に日々を費やす女を描いた『女と男のいる舗道』
フランソワ・トリフォーが「映画にはゴダール以前と以後がある」という名セリフを残すほどのヌーヴェル・ヴァーグ=ゴダールのイメージが強く、中でもデビュー作『勝手にしやがれ』は映画史の重要な位置をしめています。が、アメリカ映画を数多く観ていたガイドには、あまり得意としないビッグネームの監督の一人でもありますが、本作『女と男のいる舗道』は何か心に突き刺さる棘があり、忘れられない60年代のフランス映画の一本となりました。

貧困により娼婦となる女ナナの転落の人生をドライに描いた全12章で構成された本作は売春を特別な職業としてとらえず、扇情的なシーンもほとんどないまま悲劇的な終幕をむかえます。情緒的な要素を廃したリアルな社会派作品とも言えましょう。

[作品紹介]
・1962年/フランス映画/上映時間:84min
・監督:ジャン=リュック・ゴダール
・出演:アンナ・カリーナ、サディ・レボ、ブリス・パラン

第3位 『情事』

情事
賛否わかれる、狐につままれたような物語『情事』
ミケランジェロ・アントニオーニのデビュー作は「不毛な愛」を描いた怠惰な作品です。

もと大使の娘アンナには建築家のサンドラという恋人がいます。2人は公爵夫人にシチリアの島に招かれるのですが、アンナは親友のクラウディアも同行させるのです。一同が無人島に上陸するとアンナの姿は消え捜索をしても見つかりません。共に探していたサンドラとクラウディアがデキてしまい、やがて二人は周知の仲となるのです。その後誰もアンナの話題をしなくなるのでした。はっきりした結末もないまま映画はフェイドアウトしてしまう不思議な一篇。

[作品紹介]
・1960年/イタリア映画/上映時間:129min
・監督:ミケランジェロ・アントニオーニ
・出演:モニカ・ヴィッティ、ガブリエル・フェルゼッティ、レア・マッセリ


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