戦時中のヒロイズムに泣く
敗戦から立ち直った日本が創った『人間の條件』
邦画を代表する長尺映画と言えば『人間の條件』 |
妻と幸せな日々を送っていた主人公・梶にも戦争の足音が忍び寄ってきます。関東軍に徴兵された梶ですが、上官からの不条理な命令に従わずリンチに遭います。そんな時、梶の妻が遙々夫を尋ねてくる再会の夜のシーン(第4部のラスト)の美しさは日本映画史に語りつがれるほどです。
敗戦後、梶は妻の元に戻ることを夢みて放浪生活を送るのですが……。一人の人間が生きた「戦時中」の愛と憎しみを描いた大河ドラマは、9時間半を超える長尺故のスケールメリットがあり、戦争を追体験したような感覚に陥るでしょう。
【作品情報】
・1959~1961年/日本映画
・上映時間:574min
・監督、脚本:小林正樹
・出演:出演:仲代達矢、新珠三千代、淡島千景、小沢栄太郎、佐田啓二、千秋実、田中邦衛、佐藤慶、中村玉緒、笠智衆、岸田今日子、金子信雄、菅井きん、高峰秀子
ソ連軍の協力で創り上げた戦争大河ドラマ!
オールスターキャストの『戦争と人間』
完結篇で完結しない『戦争と人間』 |
満州事変から、二・二六事件・西安事件・日中戦争・ノモンハン事件などを背景に、中国大陸への軍部と財閥(独占金融資本)による侵略戦争を捉えながら、動乱の中の5つのラヴストーリーを絡めてみせてゆきます。
あの時代の日中の政治・経済情勢を通して、日本の狙いが浮き彫りになる視点が印象的です。日本が敗戦国の被害者意識ではなく、加害者側として軍国主義の残虐性に焦点を当てたことに本作の意義があるのではないかと感じます。上映時間は『人間の條件』に近い9時間半弱です。
【作品情報】
・1970~1973年/日本映画
・上映時間:565min
・監督:山本薩夫
・出演:滝沢修、芦田伸介、浅丘ルリ子、吉永小百合、北大路欣也、三國連太郎、高橋英樹、山本圭、中村勘九郎、二谷英明、岸田今日子、江原真二郎、高橋幸治、松原智恵子、加藤剛、栗原小巻、田村高廣、山本学、地井武男、佐久間良子、西村晃、和泉雅子、夏純子、水戸光子、山内明、丹波哲郎、石原裕次郎
今回チョイスした作品は、奇しくも戦争をテーマ・背景にした映画となりましたが、他にも3部作としてポピュラーな名作映画『ロード・オブ・ザ・リング』、『ゴッドファーザー』シリーズや、新・旧三部作構成のエピソードI~VIの『スターウォーズ』を一気に観るのも年末年始がよいチャンスかもしれません。
映画史上最も長い映画=“The Cure for Insomnia”
最も長い映画を調べてみると、“The Cure for Insomnia”というアメリカ映画で、上映時間はなんと85時間!ジョン・ヘンリー・ティミスという監督の作品で、内容は大半がL.D.グローバンの4000ページを超える自作の詩の朗読で占められているそうです。ギネスブック狙いの映画かもしれません?DVDも未発表のようですが、作ったら何枚組になるのでしょうか?【関連記事】
・2005年夏公開映画/南の試写コメ(映画)
【ガイド記事】
・今観るべき、太平洋戦争映画
・平和を考える06年公開の名画BEST5