孤独を増長される大都市ニューヨークの友情
『真夜中のカーボーイ』
アカデミー作品賞受賞作品『真夜中のカーボーイ』 |
大都会で出逢った二人は社会のはみ出し者です。最初はいがみ合ったりもしますが、どこか似た境遇の二人が徐々に惹かれ合います。ニューヨークという大都会には夢と同時に「負け組」には悲惨な現実と孤独が待っています。都会の恐ろしさの中の孤独な男2人が磁石のS極、N極のように惹きつかれてゆきます。
テキサスの田舎町のジョー(ジョン・ボイト)はラジオから流れる刺激的な都会の情報を耳にし、自らの肉体を武器にして、都会へ出てホストになろうと目論見ます。
カウボーイハットに鹿皮のジャケットにブーツ姿は、アーバンカウボーイどころかアブナイ・カウボーイ丸出しの間抜けさで、都会の女たちには相手にされません。初仕事は年増のブロンドでしたが、一夜を共にした後に「同業者」であることがわかり、言葉巧みに金を巻き上げられてしまいました。そんな時、万引き男のラッツオ(ダスティン・ホフマン)が擦り寄ってきて、まんまとハメられ無一文に……。そんなジョーの目に映った大都会には、変質的な人間たちの巣窟と映ったのでした。
ある日、ラッツオを見つけるのですが、彼は片足が不自由で肺を病み、脂汗を浮かべたどん底の生活を見るのでした。それから、ジョーとラッツオの奇妙な同居生活がはじまります。
ラッツオにはいつしか太陽の降り注ぐフロリダに住む夢があります。ある日、パーティで金持ち女と知り合い運が向いてきたジョーでしたが、ラッツオの体調が悪化。歩くこともままならなくなったラッツオをフロリダに連れてゆきたいと思うジョーは、街で出逢った同性愛者の客から金を奪い殺害、ラッツオを抱えてフロリダ行きの長距離バスに乗り込みます。
ラッツオは車内で失禁、ジョーは彼の下着をかえ、椰子柄のアロハシャツを着せるのですが、夢の地を目の前にして、ジョーの腕の中で息をひき取ってしまいます。
アカデミー賞史上初の成人指定映画での作品賞受賞作品としても歴史に残る作品です。
【作品情報】
・1969年/アメリカ映画
・上映時間:113min
・監督:ジョン・シュレシンジャー
・出演:ジョン・ヴォイト、ダスティン・ホフマン、シルヴィア・マイルズ、ジョン・マッギーヴァー、ブレンダ・ヴァッカロ、ボブ・バラバン、バーナード・ヒューズ、ルース・ホワイト
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