男の友情と裏切りの物語の傑作に同じ原作でも映画トーンが随分と異なる『太陽がいっぱい』、『リプリー』や、『さらば友よ』、『手錠のままの脱獄』、『夜の大捜査線』などの名作映画はたくさんあります。
男の友情と裏切りを見せるギャング映画
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』
「アマポーラ」を聴くと思い出す『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』 |
一方、男Aの親友Bは、そんなAに対して友情と共に尊敬を抱くようになります。関係が続き、互いが利害の違う大人になって別の道を歩みだしたその時。男Aは事業に成功して出世しますが、Bの人生は上手くゆかない。二人の友情は続いているかのように見えますが、男Bはどんなに努力しても到底叶わない親友Aにジェラシーを感じはじめます。
憧れが嫉妬の連続になった時、親しかった故にBは絶望を感じるかもしれません。その絶望があまりにも行き過ぎると、時には男Aが邪魔だと思うようになるのかもしれません。思い詰めると、男Aのすべてを奪ってしまおうと恐ろしいことを考えるかもしれません。
本作『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』は、子供のころから固い絆で結ばれた男たちがギャング団となり、成り上がってゆく物語を骨格にしていますが、男の友情や嫉妬、そして裏切りが重いテーマとなって、観る者を圧倒するでしょう。
映画の冒頭、ヌードルス(ロバート・デ・ニーロ)は警察に仲間の情報をリークします。あまりに無謀な計画を止めさせるためでした。しかし、その密告によって少年時代からの仲間、マックス、パッツィー、コックアイの3人が警察に殺されてしまいます。裏切りへの報復はヌードルスの周囲に迫ってきます。
ヌードルスはユダヤ移民の子供で、ニューヨークのユダヤ人街の裏通リを歩いていました。仲間同士が集まり知恵を絞って、悪の道に生きることが唯一の選択でした。1923年に17歳のヌードルスはマックス(ジェームズ・ウッズ)と出会います。彼らの仲間には他にもパッツィー、コックアイや、一人マジメに働いているモーが居ます。ヌードルスはモーの妹で女優を目指しているデボラ(ジェニファー・コネリー)に秘かな憧れを抱いていました。
この少年時代をドラマの中に随時回想形式で導入する重厚な手法が見事で、ロケやセットが見事に古い時代を再現しています。物語はギャング団の今と昔を往復しながら、ヌードルスの裏切りまでの真相に迫ります。
大きなドンデン返しのある終盤には、涙せずにはいられません。一生ウソをつき通すこともできたかもしれない男たちの、最後の最後の友情。ラストシーンに観客は唖然とすることでしょう。
アメリカでは暴力描写を中心に短縮編集版で公開して、評判はよくなかったそうですが、日本公開のセルジオ・レオーネのディレクターズカット版と言える本作は、『ゴッドファーザー』にも匹敵するギャング映画の傑作です。『ゴッドファーザー』がファミリー主体の作品だとすると、本作は、友情を主軸に置いた作品です。
【作品情報】
・1984年/アメリカ映画
・上映時間:205min
・監督:セルジオ・レオーネ
・音楽:エンニオ・モリコーネ
・出演:ロバート・デ・ニーロ、ジェームズ・ウッズ、エリザベス・マクガヴァン、ジェニファー・コネリー、ダーラン・フリューゲル、トリート・ウィリアムズ、チューズデイ・ウェルド、バート・ヤング、ジョー・ペシ、ジェームズ・ヘイデン、ウィリアム・フォーサイス
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