『単騎、千里を走る。』

『単騎、千里を走る。』(2005)[千里走単騎]
[Riding alone for Thousands of Miles]

「三国志」に由来する、中国の京劇の演目「千里走単騎」を中国の巨匠チャン・イーモウ[張芸謀]、と日本が誇る名優高倉健が「いつか人々を感動させる素晴らしいものを、共に」の15年来の想いを結実させた作品。2000年夏に、高倉健と共に企画をスタート。そしてシナリオ作りに5年をかけ、2004年撮影は中国・雲南省でクランクイン。第18回東京国際映画祭では[特別招待作品]オープニング＆ワールドプレミアとして上映された。

＜＜高田（高倉健）は、余命いくばくもない民俗学者の息子の代わりに、京劇「千里走単騎」を撮影しに、中国の奥地・麗江市を訪れる。それは永年の確執によって生じた親子の心の溝を埋めるための旅でもあった。その地で…。＞＞

中国での出演者は、（なんと）すべて素人で、なおかつ実名で登場する。それで『秋菊の物語』（1992）的な感じかと期待して観に行きました。チャン・イーモウ監督の得意分野であることは、言わずもがな。本物の涙と誠実な人々と心温まる人間愛、とにかく素晴らしい映画です。そういった人々を捜し出す（ヤンヤン役のオーディションは7万人!?の中から）、そしてその人々にカメラの前で自然に振舞うようにといった術は監督ならでは。通訳のもどかしさも「単騎」。その通訳さん相手に不器用な高田が度々、電話する部分にちょっと笑いを覚えることもあった。「すみません…高田です」と、高田にとっては熟慮した末なのだが、わたし考えたんですけどね、と切り出す時は、相手が『へっ？』と思うような突拍子もないことを言い出すのだ。でも、それが不可能という考えを…。

撮影時は、付き人もつけずに単身で中国に渡ったという高倉健さん。茶葉古道の街、石鼓村[セッコソン]―子供のヤンヤンが預けられている村では村長も村長役で出演。長卓宴[チョウタクエン]というなが～い机で客人をもてなす村人たち。石鼓村は撮影後、2005年の8月に洪水で浸水してしまった、そう。劇中に登場した水上の橋なども水の中― そう思いながら観るとまた違った思いがよぎる。

人が感動する時、権力やお金やモノではなく。目には見えないけど心に受ける思い。それこそ人間として大切にしていきたいこと。美しいものを美しいと素直に言え、感動できる清らかな心を持っていたい、いつまでも。[2005/12/9]

11/19NHKスペシャル「高倉健　千里を走る」放映―11/21にBSでも放映。

『単騎、千里を走る。』
[千里走単騎][Riding alone for Thousands of Miles]
2006年1月28日[土]～全国東宝邦画系ロードショー
プロデューサー：ビル・コンほか　監督：チャン・イーモウ[張芸謀]　　日本版：降旗康男
出演：高倉健、中井貴一（声の出演）、寺島しのぶ　ほか
2005年／中国、日本／1時間48分／東宝配給
公式サイト：http://www.tanki-senri.com/