プロローグ - ドッグヴィルの住人
ロッキー山脈の麓、孤立した村「ドッグヴィル」。村人はわずか23人。建物はどれも貧相で粗末な小屋のようだった。一番まともなのはトム(ポール・ベタニー)の家で元医者の父親と二人暮し。チャック(ステラン・スカルスゲールド)は気難しい男でりんご農園を経営し、妻ヴェラ(パトリシア・クラークソン)と7人の子供、そして番犬モーゼスをなんとか養っている。村の西側で雑貨店を経営しているのはジンジャー夫人(ローレン・バコール)。競合する店がないため商品に高値をつけている。トムが思いをよせるガラス工場の娘リズ(クロエ・セヴィニー)はいつかこの寒々しい村をでることを夢見ている。その兄ビル(ジェレミー・デイヴィス)はトムのチェス友達だったが、気が弱く猜疑心の強い男だった。他には、目が不自由なことを隠し続けている老人ジャック(べン・ギャザラ)や音の出ないオルガンを引き続ける教会の管理人マーサ(ジョブハン・ファロン)など、この物語の奇妙な登場人物たちは、徐々に姿をあらわす。
Chapter 1:トムが銃声を聞き、グレースと会う
いつものようにトムがビルとチェスをしていると、ジョージタウンの方向から一発の銃声が聞こえた。人の気配がする暗闇に目をこらすと、一人の美しい女性(ニコール・キッドマン)がたたずんでいた。助けを懇願する彼女を廃坑にかくまうと、やがて黒塗りの車に乗ったギャングたちが彼女を追ってやってきた。トムはうまくとりつくろい彼らをやり過ごすことに成功した。翌日トムは村人たちに彼女をかくまうことを提案し、条件つきの同意を得る。その条件とは2週間で彼女が村人全員に気に入られること、というものだった。
Chapter 2:グレースはトムの計画に従い肉体労働を始めるChapter 3:グレースが挑発的な試みに喜びを見出すChapter 4:ドッグヴィルの幸せな日々Chapter 5:とにかく独立記念日(7月4日)Chapter 6 : ドッグヴィルが牙をむくChapter 7 : ついに嫌気がさしたグレースはドッグヴィルを去り再び新たな日を迎えるCnapter 8 : 集会で真実が語られトムが退席する(だが後で戻る)Chapter 9:ドッグヴィルに待ち望んだ来訪者たちが現れ、映画は終わる
前代未聞の豪華キャスト
今回主役に抜擢されたのは『めぐりあう時間たち』(02)でオスカーに輝いたばかりのニコール・キッドマン。今、ハリウッド頂点に立っている女優といっても過言ではない。彼女はかねてからトリアーの映画に出演することを熱望していた。本作の撮影にあたってはトリアーと何時間にもわたって議論を重ね、深い信頼関係を結んだという。共演陣が、これまたすごい!― ローレン・バコール『オリエント急行殺人事件』(74)、ジェームズ・カーン『ゴッド・ファーザー』(72)、ベン・ギャザラ『バッファロー'66』(98)といった“ハリウッドの伝説”を支えたそうそうたる名優たちが集まった。さらにはクロエ・セヴィニー『ブラウン・バニー』(03)、ジェレミー・デイヴィス『プライベート・ライアン』(98)、ポール・ベタニー『ギャングスター・ナンバー1』(00)、パトリシア・クラークソン『エイプリルの七面鳥』(03)『 エデンより彼方に』(02)ら新鋭実力派も参加。そして北欧の名優ハリエット・アンデルソン『不良少女モニカ』(52)やステラン・スカルスゲールド『奇跡の海』も加り、前代未聞の豪華キャストとなった。