テクノポップ/フューチャーポップ

Perfume対談~グラミー賞への道(3ページ目)

最初こんな大それたテーマではなかったんです。PerfumeとYMOについて語っていたんです。でも、今のPerfume、言えば現実になる。目指して欲しい、グラミー賞!

四方 宏明

執筆者:四方 宏明

テクノポップガイド

PerfumeとYMO

先生:
さて、PerfumeとYMOの関係というが気になりますね。2007年に出た『YMO GLOBAL』というYMO本で「90年以降のYMOチルドレン」というテーマで、capsuleとYMOのミッシングリンクについてちょっと書きました。例えば、ピチカート・ファイヴやDaft Punkなら、capsuleは太い線で繋がっているんです。でも、capsuleやPerfumeにはYMOの直接的な引用がないものの、やはり繋がっている。

博士:
「love the world」ですが、声が入ってる時はさして気にならなかったのですが、インストを聴いてるとそのクオリティーの高さに久々に鳥肌。 声入りだと一見普通のテクノポップ風なのですが、オケだけ聞くと実に細かい音の選択ひとつひとつが神業。 なんとなく絶頂期の教授のような・・・。

先生:
博士、それは大発見かもしれません!

博士:
テクノ系の場合、とにかく電子音で埋め尽くそうとする傾向があります。これはダンスを前提に基本的にグルーヴボックスやリズムマシン主体に作曲するスタイル上いたし方なかった訳です。

一方、一世を風靡し、意外と継承されなかったスタイルとして教授=坂本龍一の“テクノ”があります。『B2-UNIT』~『NEOGEO』に至る数枚のアルバムがまさにそうです。 ある意味、当時流行のテクノブームに迎合するかのようでインテリの彼としては不本意な時期だったのかも知れませんが、確かな作曲力と洗練された感覚で作られた楽曲はテクノ系楽曲として至極の逸品ぞろいです。 それ以降、よりクラシカルでマニアックな世界に行ってしまい凡人の私にはついていけなかった訳ですが・・・。

先生:
具体的にはどの曲を想定すべきでしょう?

教授サウンド?

博士:
「love the world」を聞いて真っ先に浮かんだのは、「きみについて」ですね。また、「Ballet Mechanique」や「Self Portrait」「Fieldwork」等が走馬灯の様に巡ります。 どの曲もまるですべてのパートが主旋律を奏でているように必然的に動き、ピアノ・ストリングスといったアコースティック・サウンドも効果的に使用された、きわめて高度な作曲技術で作られた極上のテクノです。

先生:
でも、ごく最近まで、capsuleにしてもPerfumeにしても、それほど教授を感じさせることは無かったですよね。

博士:
中田Pの場合、「ビタミンドロップ」当時からピコピコしながらもちょっと対位法的な動きを見せる等、他のテクノ系とは明らかに違う世界観みたいなものを見せてくれました。それは決して固定されたキャラではなく、むしろそのスピリッツを保持したまま進化しているんです。

「love the world」で気がついた具体的な変化はまずリズムです。クラブ系テクノの定番だった4つ打ちベードラが無くなり「ドン~パン ドン~パン!」という大きな刻みに。特徴だったハイハットの八つ刻みも無くなり、その代わり「ビキッ」「ポッ」といった電子音を微妙なタイミングで入れてくる事で補完してきます。ベースもメロディアスでグルーブ感のあるスタイルに変わり、ゲートリバーブっぽいスネアも印象的。

こういった贅肉を取り去ったタイトなリズムは1980年代に流行したスタイルです。イントロのフレーズリフレインはまるで戦メリの様に頭に焼き付いてきます。DX系の軽いブラスに対し、ピアノが応えるAメロのアレンジ。ピッチが怪しそうなフルート系がカウンターを取るBメロ。 珍しく同名調に転調するサビ。これらはデジタルシンセが台頭してきた1984年以降のテクノのスタイルです。 当初ガーシュイン・キングスレーみたいだった彼のサウンドがまるで絶頂の教授のようなサウンドに進化しているのです。何か中田Pの中で70年代~80年代のテクノ史がヴァーチャルに進化して行ってるみたい。今まさに彼は1984年頃に差し掛かっているような感じさえします。
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