TOTOサウンドを継承した完成度の高いアルバム
『This Fall』は、冒頭からTOTOテイストのアメリカンロックで突っ走っている。1曲目のタイトル曲のイントロなどは、最近のTOTOのアルバムやスティーヴ・ルカサーのソロアルバムに入っていても違和感がまったくないだろうと思えるほど。それもそのはずで、これはルカサーとの共作ナンバーなのだ。ギターのリフもソロもルカサーらしさが全開だし、アップテンポのリズムもカッコいいナンバーだ。
TOTOサウンドを継承したジョセフの新作『This Fall』 |
ただTOTOっぽいだけではなくて、このアルバムには多彩な音楽の要素が詰め込まれている。3曲目の「It's a Far Cry」は、前作の『スマイル』や『ティアーズ』でピアノを弾いていたデヴィッド・ハリスとの共作で、やはり落ち着いたテイストの美しいバラードだ。切なくて温かく、後半徐々に盛り上がってくるところもカッコいい。このアルバムのひとつのハイライトがこの曲だと言ってもいいだろう。
「YEAH, YEAH, YEAH」は底抜けに明るくてさわやかなチューン。サビの“She said Yeah, Yeah, Yeah”というところなどは能天気なまでに明るくて、とにかくノリがいいポップなナンバーだし、シンプルでポップな「I Know What I Know」などは映画音楽のような凝ったアレンジも顔をのぞかせる。「She Walked」は“ド”がつくほどストレートでシンプル、軽快なロックンロールだし、「Wonder At All」はアコースティックのゆったりした大きなノリが特徴で、ビートルズのような雰囲気さえ感じられる。
TOTOっぽく始まって、徐々に多彩な音楽が入り混じっていく、そんなアルバムになっているのだが、全体を通してちゃんと統一感があって、ジョセフらしい作品にまとまっているところはさすがだ。“元TOTOのジョセフ”という看板を自ら意識しつつ、それを含めた自分の音楽をきちんと表現することに成功したアルバムだと言えるだろう。ひょっとしたら、解散したTOTOのサウンドを今後引き継いでいくのはジョセフなのかもしれない。
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