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インナーゲーム オブ ジャズ Part2(4ページ目)

30年前に一大センセーションを巻き起こし、今また「コーチングブーム」の中で再評価が始まっている「インナーゲーム」理論をジャズに生かす連続記事。第2回はちょっと難しい理論編。

執筆者:鳥居 直介

セルフ2の自然学習能力

一方で、セルフ2は、(音楽的素人であるセルフ1がそぎ落とす前の)生の音楽情報を身体に蓄積している。楽器の演奏についての情報も同じだ。セルフ2のもっている情報は混沌として整理されていないものではあるが、セルフ1が持つそれよりもはるかに現場に即したものであり、豊富である。

だとすれば、セルフ1が行うべきことは、「立場をわきまえる」ということにつきるだろう。セルフ2が持つ豊富な情報を、セルフ2に処理させる。セルフ1は大まかな方向性だけを示し、実際にどうやるかはセルフ2に任せる。なぜなら、判断するために本当に必要な情報を持っているのはセルフ2だし、それを実際にやるのもセルフ2だからだ。

セルフ1がセルフ2にあれこれ命令している姿は、現場を知らない経営者が、スタッフに高圧的に接している姿に似ている。セルフ1は大まかな方針だけを示し、セルフ2に現場処理を任せている姿からは、今日的な、先進的な企業のあり方が思い起こされるだろう。社員の仕事、自己学習を信じる経営スタイルが、今日では1つの理想として、スタンダードになりつつある。

「言葉以前」を扱うのはセルフ2の仕事

インナーゲームが成果を上げる仕組みを上手く説明することは難しい。しかし、セルフ1がでしゃばると上手くいかない理由については、ここまで読んでいただいた読者の方にはある程度納得いただけるのではないだろうか?

セルフ1が扱える情報は抽象度の高いものに限られている。大雑把にいえば、セルフ1が扱えるものは「言葉にできるもの」に限られる。しかし、楽器演奏やスポーツで必要な情報、感覚、動きというものの大部分は、言語化に程遠いしろものである。

また、抽象度の高い情報を扱うセルフ1はどうしても、その場の運動に無関係な情報であっても、抽象度の高い情報に気を取られてしまいがちだ。「あの子が見に来てくれている。ここでいい演奏をすれば……」「1日2時間練習しないといけない」。こういった「その場そのときの演奏」に無関係な情報は、もっともセルフ1の関心を引くものである。

インナーゲームは、「集中力の科学」ともいわれている。集中し、没頭した演奏や練習を行なうために何が必要かを、インナーゲームはわかりやすい形で提示してくれているのだ。

次回、Part3では、インナーゲームの実践法について、徹底的に解説したいと思う。



※本稿の前編、続編は以下のとおり!

インナーゲーム オブ ジャズ Part1
インナーゲームの理論的側面について分析する!
インナーゲーム オブ ジャズ Part2
インナーゲームの理論的側面について分析する!
インナーゲーム オブ ジャズ Part3
インナーゲームを演奏・鑑賞に生かす具体的な方法論を解説!



●参考書籍新インナーゲーム
演奏家のための「こころのレッスン」―あなたの音楽力を100%引き出す方法(原題:The Inner Game of Music)
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