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インナーゲーム オブ ジャズ Part2

30年前に一大センセーションを巻き起こし、今また「コーチングブーム」の中で再評価が始まっている「インナーゲーム」理論をジャズに生かす連続記事。第2回はちょっと難しい理論編。

執筆者:鳥居 直介

インナーゲームはなぜ有効か?

新インナーゲーム 心で勝つ! 集中の科学
新インナーゲーム 心で勝つ! 集中の科学
ガルウェイ著、後藤新弥訳、日刊スポーツ新社、2000年。インナーゲームとは、心と体の連係を考察しながら、自分自身の内側を引き出すための発想法。「集中力」にスポットを当て、分かりやすく画期的な方法でメカニズムを説明する。76年刊「インナーゲーム」の改訂版。
インナーゲーム オブ ジャズ Part1では、ジャズ演奏者がしばしば陥る「自責モード」を取り上げ、それが、『インナーゲーム』でいうところの「セルフ1(自分)」が「セルフ2(自身)」を叱責している状態である、ということについて述べた。また、その状態から抜け出す方法として、「セルフ1を黙らせ、セルフ2の好きにやらせる」という方法を提示した。

Part2では、この「セルフ1を黙らせ、セルフ2の好きにやらせる」方法がなぜ有効なのかについて、さらに掘り下げてみたい。「インナーゲーム」が単なるイメージトレーニングやメンタルトレーニングよりもはるかに遠大な射程を持った「ゲーム」であることをご紹介したいと思う。

ややこしい話をすっとばしたい人は、インナーゲーム的実践法をまとめたPart3(12月up予定)に飛んでもらってももちろんかまわない。

なお、このインナーゲームオブジャズPart1~3の内容は、書籍『インナーゲーム』を筆者なりに解釈し、ジャズ演奏論として応用したものであり、インナーゲームそのものについて関心を持たれた方は『新インナーゲーム』『演奏家のための「こころのレッスン」―あなたの音楽力を100%引き出す方法(原題:The Inner Game of Music)』などの書籍を一読されることを勧める。

なぜセルフ1を黙らせなくてはいけないのか?

セルフ1(自分)というのが、いかに口うるさくセルフ2(自身)を評価し、命令し、叱責しているかということは、ひとたび意識するようになれば、誰もが実感できるだろう。私たちの頭は考え、評価することを止めない。悟りを開いたお坊さんでもなければ、「頭を空っぽ」にすることは不可能に近い。

しかし、あるいはだからこそ、人はこう言うかもしれない。「考えること、評価することのどこが問題なのか? 楽器のコントロールはあくまで意識的に行うことだ。意識の命ずるままに身体をコントロールして何が悪いのだ」と。

実はこの問いにきちんと反論することは難しい。たしかに、音楽には意識的に行なうべき側面が多くあり、それはそれで、間違ってはいない。

だから、「インナーゲーム」は、基本的に「そうやってもうまくいかなかった人」が試みてみればよいのではないか、と私は考えている。『インナーゲーム』著者のガルウェイや、インナーゲーム信奉者はおそらく、「インナーゲームこそもっともパフォーマンスを高める方法である」ということを確信しているだろうし、私もその見解には賛成なのだが、一方で私はどうしても、「意識的なコントロール至上主義」に冷淡になることができない。インナーゲームはインナーゲームとしてよいとして、そうしたコントロール至上主義、努力主義もみとめたいという気持ちがある。

いずれにせよ、最終的には読者ひとりひとりに実際に試みてもらうしか方法はない。本稿「Part2」では、「インナーゲーム」の有効性を物語る、さまざまな傍証についてできるだけ多く読者にご紹介したいと思う。

次ページから、「セルフ1」を黙らせることの有効性について検討する!


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