ロックファンへ勧めるジャズCD!
いずれにしても、『Biches Brew』がジャズとロックの融合への路を、ジャズ側から開いた開拓者であったことは間違いありません。この時代をマイルスとともに歩んだチック・コリア、ハービー・ハンコック、ジョン・スコフィールドらがその後、ロックファンを含めた幅広い層からの人気を集めたことは、その傍証と言っていいでしょう。ここでは、そうしたマイルスが開いたファンク、ジャズ・ロック路線の名盤を中心にご紹介します。Herbie Hancock『Headhunters』 1973年作品。若きハービーが、迷いを振り切り16ビートで乗りのいいアドリブを弾きまくる。ベニー・モウピン(sax)、ポール・ジャクソン(bs)、ハービー・メイソン(drum)、ビル・サマーズ(perc)らとともに、キャッチーなテーマと切れ味抜群の「決めリフ」をこれでもかというほど聴かせてくれる。30年前とは思えないフレッシュな録音。 |
1973年作品。マイルスバンドからの脱退後、ハービーは若手ジャズピアニストの第一人者として、当時のジャズ界を牽引していた。電気楽器は使い始めていたものの、マイルスのように本格的にファンク路線には入っていなかったハービーが、迷いを振り切り16ビートで乗りのいいアドリブを弾きまくる。
キャッチーなテーマと「決めリフ」は、30年を経た今、クラブシーンでも古典的定番となっている。しかし当時のジャズファンの多くは本作を「大衆迎合路線」と非難。そうした世評を意識したのか、ハービーはその後も本作のようなファンク作品とともに、ストレートアヘッドなジャズも平行して演奏し続けている。
同じく1973年作品。ハービーと同じく、チック・コリアもマイルスバンドでの長い研鑽を積んだ後、自身のバンド“Return To Forever”を結成。本作はこのバンドでの2作目で、大ヒットとなった第1作『Return To Forever』に比べると影が薄い印象。この項で本作をご紹介する必要性はただ1つ、6曲目「Spain」だ。ジャズロック史上に残る名曲であり、多くのミュージシャンがレパートリーに取り入れている、最高にかっこいい曲。「アランフェス交響曲」をイントロにあしらい、タイトル通りラテンの薫りがする熱い旋律が、スピード感あふれるパーカッションに絡み合う。とにかく、この曲を聴くだけでも買って損はない一枚である。
Soulive『Doin' Something 』 オルガン・ジャム(即興中心)バンドの草分け、Souliveのデビュー2枚目、ブルーノート移籍後第1作。本作ではジェームス・ブラウン(vo)のバックも努めたフレッド・ウェズレー(tb)を加え、オーバーダブも駆使したグルービーな演奏を聴かせてくれている。 |
ニューヨークのジャズシーンで数年来ホットなのが、オルガンを中心としたジャム(即興中心)バンド。Souliveはその草分け的存在だ。エリック・クラスノ(g)とニール(org)とアラン(dr)の3人グループの音楽は、「これぞファンク」。その演奏がはらむグルーヴ感は抜群。もちろん、逆に言えば彼らの音楽は「グルーヴ感命」であるわけで、音楽的な深みがそれほどあるわけではない。だから長く聴くと飽きが来るという弱点を持っているのもたしか。しかし、彼らの演奏が持つ抜群の「乗り」は、きっと多くのロックファンをとりこにするだろう。ライブに行けば、間違いなく楽しませてくれる人たち。ハービーから続くファンク路線の、もっとも新しい世代のスターだ。
本作は、彼らのデビュー2枚目、ブルーノート移籍後第1作である。ジェームス・ブラウン(vo)のバックも努めたフレッド・ウェズレー(tb)を招き、人数は少なくても厚みのあるサウンドを聴かせてくれている。
今回のガイド記事はいかがだったでしょうか? 次回は「ブルースファンのための入門盤」です。ジャズの祖先であり兄弟であるブルース。当然のことながらすべてのジャズには「ブルース」があるわけですが、中でもコテコテ、ブルージーなジャズをご案内します。
関連サイト
All About[Soul・R&B・HIP-HOP」
タイプ別「はじめてのジャズCD」インデックス
vol.1 これぞジャズ!
vol.2 クラシックファンための入門盤
vol.3 ロックファンのための入門盤
vol.4 ブルースファンのための入門盤