70年代、ベトナム戦争にはじまるアメリカ国民の不安感は、ジャズにも様々なかたちで表れはじめる。そうした中でマイルスは、エレキ楽器をバンドに取り入れ、ジャズ界は混沌とした時代を迎える。
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マイルスが1969年に録音した『イン・ア・サイレントウェイ』は、その後のジャズの流れを大きく変えることとなる。簡単に言えば、現代の“何でもあり”のジャズの土台を作ったのは、この『イン・ア・サイレントウェイ』である(少々強引な意見であるが…)。その後、8ビートを中心とした、過激でサイケデリックな方向へと突き進む。ただしマイルスのこの時代の表現は、純粋な音楽の延長にあり、いわゆるメッセージ性はうすい。戦争やドラッグに対するメッセージ性の強い音楽に感化された、マイルスの答えであると言えよう。
ハービー・ハンコック(ピアノ)をはじめ、この時代のマイルスバンドを支えたミュージシャン-サックスのウェイン・ショーター、スティーブ・グロスマン、デイブ・リーブマン、ピアノのジョー・ザビヌル、チック・コリア、キース・ジャレット、ギターのジョン・マクラフリン、ベースのデイブ・ホランド、ドラムのジャック・ディジョネット、アル・フォスターらは、現代においても代表的なジャズマンであるが、70年代に輝かしい作品を残している。
ハービー・ハンコックの『ヘッドハンターズ』を紹介しよう。印象的なベースラインで始まるこの作品は、そのイントロで既に走りまくっている。最初の1分で予感させられるその勢いは、アルバムを通して裏切られることのない、ハンコック流のポップなファンクである。
マイルスバンドが中心になってしまったが、この時代を象徴するフュージョン全盛期に出現したギター・ヒーロー達の存在も重要だ。フュージョンブームという言葉があるが、これはラリー・カールトン、リー・リトナー、ジョージ・ベンソン、パット・メセニーら、ニューヒーロー達によってブレイクするのであった。
電気楽器とジャズの融合は、フュージョンという大きな表現力をジャズにもたらした。そしてジャズは、更に自由なものを求めて動き始める。