DTM・デジタルレコーディング/DTM基礎知識

【シリーズ テクニカル用語徹底解説】その6 レイテンシーは何が問題なのか?(2ページ目)

オーディオインターフェイスの性能を見る上で重要な要素となるレイテンシー。そもそも、これは何を意味していてものなのでしょうか?まずは、レイテンシーが引き起こす問題をDAWの活用面から考えてみましょう。

藤本 健

執筆者:藤本 健

DTM・デジタルレコーディングガイド

レイテンシーが大きく影響するソフトシンセ


ソフトシンセのイメージ画面、Pro-53
ソフトシンセをリアルタイム演奏すると、レイテンシーの影響が如実に現れる
しかし、どうしてもレイテンシーが問題となるケースもあります。それがソフトシンセをリアルタイム演奏させたときです。キーボードを弾いた情報をMIDIでPCへと送り、そのPCのソフトシンセで音を発生させた後にオーディオインターフェイスに行って音が出るわけですから、いろいろなところで遅れが生じる可能性があります。そして、一番問題となるのがオーディオインターフェイスのレイテンシーなのです。もし、500msecも遅れていたら、まともに演奏などできません。ものすごいディレイがかかった音をモニターしているようなものですから。

レコーディング音をモニターするとディレイが生じる


また、ソフトシンセ以外でもDAWでよく問題になるのが、レコーディングしている音をモニターする場合です。通常のレコーディングではボーカルでもギターでも音をモニターしながら行います。しかし、ここでPCのレコーディングシステムを通すと、レイテンシーが大きな問題になります。まあ500msecなどというレイテンシーは極端な例ではありますが、これだけ遅れていたらモニターなどしないほうがマシでしょう。

ただ、モニターすることでのメリットとしてエフェクトがあります。たとえばボーカルをモニターする場合、リバーブのかかった音をモニターできれば、気持ちよく歌うことができるでしょうし、ディストーションとコーラスのかかったギターの音をモニターできれば、音の余韻などを確認しながら演奏することができます。

でも、ここにレイテンシーがあると、ひどいディレイがかかった状態となってしまいます。往復で1秒近いディレイがあったら、話にもなりませんが、50msec程度だとしても、そのズレはかかり気になるものです。こうしたことを考えても、レイテンシーは小さいに越したことがないのです。

ASIOダイレクトモニタリングとは


ここで登場するのが、ASIOダイレクトモニタリングというものです。これはASIO 2.0に対応したドライバで搭載されている機能であり、CubaseSXやSONARなどで利用できる機能です。

ASIOダイレクトモニタリング
ASIOダイレクトモニタリングをオンにすると、レイテンシーは0になるが、エフェクトは利用不可となる一方、ソフトシンセのリアルタイム演奏では何の効果もない
この機能をONにすると何ができるのかというと、レイテンシーがゼロのモニタリングが可能となるのです。ただ、これは入ってきた音をそのまま出すというものであり、PCの内部を通さないという点がミソなのです。つまり、レコーディングしている音をモニターする場合、違和感はないけれど、PCを通さないため、プラグインのエフェクトを利用することはできません。また、ソフトシンセを鳴らす際などには、なんら関係のない機能なのです。

それを理解した上で、ASIOダイレクトモニタリングを利用すれば、使い勝手のいいレコーディングシステムを構築することができるでしょう。


次回は、このレイテンシーはどの程度の時間が最適値なのか、そして設定によってどこまで追い込むべきで、その意義がどれだけのものなのか、またレイテンシーはどんな仕組みで生じているのかなどを考えていきます。
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