DTM・デジタルレコーディング/DTM基礎知識

【シリーズ テクニカル用語徹底解説】その6 レイテンシーは何が問題なのか?

オーディオインターフェイスの性能を見る上で重要な要素となるレイテンシー。そもそも、これは何を意味していてものなのでしょうか?まずは、レイテンシーが引き起こす問題をDAWの活用面から考えてみましょう。

藤本 健

執筆者:藤本 健

DTM・デジタルレコーディングガイド

オーディオインターフェイスの性能を見る上で重要な要素となるひとつがレイテンシーです。あまりカタログスペックなどに数値が載ってるものではありませんが、そもそも、これは何を表していて、どんな数値だとどういいのでしょうか?ユーザーの中にはレイテンシー信奉者なる人たちもいるようですが、その意義について2回に分けて考えていきたいと思います。まずその第1回目の今回は、レイテンシーが引き起こす問題についてです。

レイテンシーとは?


まず、レイテンシーという言葉自体をご存知ない方もいると思いますので、簡単に説明しましょう。これは英語でLatencyと書き、直訳すれば「遅れ」です。何の「遅れ」かというと「オーディオインタフェイスでの音の遅れ」なのですが、それだけでは、よく分かりませんよね。これはPCがプログラムで音を出す命令を下してから、実際に音が出てくるまでの時間差を意味しているのです。

たとえばレコーディングしてあるデータを再生する場合、通常プレイボタンを押しますが、このボタンを押してから、音が鳴り出すまでの時間差ということになります。が、通常この時間差が気になるという人はいないでしょう。確かに押した瞬間には音は出ないのですが、CDでもMDでもプレイボタンを押してすぐに鳴るわけではないし、ここで問題が生じるわけでもありません。

再生時のレイテンシーと録音時のレイテンシー


入力レイテンシーと出力レイテンシー
入力のレイテンシーと出力のレイテンシーが存在する
このレイテンシーも厳密にいえば再生時のレイテンシーと録音時のレイテンシーというものがあります。つまりPCが音を出そうとして、実際に音が出るまでの時間差と、外部から音が入ってきて、実際にPCが認識するまでの時間差です。

先ほどのように単純に再生するだけでは、問題にならなかったレイテンシーも録音が絡んでくるとちょっと気になります。そう現在のDAWソフトなどを使えば、誰でも簡単に多重録音ができますが、この際、通常はすでに録音した音をモニターしながら、別のパートを録音していきます。でも、ここにレイテンシーがあるとしたら、音がずれてしまうのではないかという心配がでてきます。

そもそも、このレイテンシーはオーディオインターフェイスによって、ずいぶんと差があります。古いオーディオインターフェイスだと、500msec、つまり0.5秒近い音の遅れが出るのです。さすがに、0.5秒も音がずれたら、どんな人にでも明らかな音の遅れとして分かってしまいます。電話でも、500msecもレイテンシーがあると、違和感を感じるほどです(電話の世界でもレイテンシーという言葉は使われるんですね)。

でも、ここはうまくできたもので、PC自体がオーディオインターフェイスにどれだけのレイテンシーがあるのかを認識することができるため、録音時にそのレイテンシー分だけ早めの位置にデータを書き込んでしまえばすべてが解決します。

たとえば再生、録音それぞれに500msecのレイテンシーがあるオーディオインターフェイスで、すでに録音したトラック1のデータをオーディオインターフェイスを経由させて、トラック2へダビングするとします。この場合、往復で1000msecつまり1秒のズレが生じてしまうはずですが、最初から1秒のズレがあることが分かっていたら、1秒前の位置に録音した結果を書き込むようにすれば、ドンピシャなタイミングで合うので問題ないわけです。
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