いまパソコンショップや大手家電量販店に行くと、数多くのシリコンオーディオプレイヤーと呼ばれるものが販売されています。これはカセットテープやMDといったものを用いず、メモリー上にデータを置くことで利用できるコンパクトなプレイヤーです。そしてその多くがMP3プレイヤーと呼ばれるもので、データフォーマットにMP3を用いています。MP3以外にもATRAC3、AAC、TwinVQなどいくつかのフォーマットは存在するものの、大きなシェアを持っているのがMP3です。
一方で、インターネット上で頻繁にデータ交換が行われているのもMP3です。もちろん、これは不法行為なわけですが、ツールが豊富に存在し、非常に手軽に扱えるため、この不法行為が広まっているのです。
実際に読者のみなさんの中にもMP3を利用している方は多いでしょう。まあ、きっとほとんどの方は不法行為には手を染めていないとは思いますが、そうした行為は別にしてもMP3が便利なものではあることは間違いありません。
でも、MP3が何物であるのかということについてご存知な方は意外と少ないように思います。そこで、このMP3について少し解説してみたいと思います。
■オーディオはLHaで圧縮できない!?
MP3の話題に入る前に、オーディオデータと圧縮という関係について、少し考えてみたいと思います。
読者のみなさんの中でも、ファイルの圧縮ということを行った経験のある方は多いと思います。いわゆるLHaとかZIPというツールを用いてのファイル圧縮です。データにもよりけりですが、これを使うとずいぶんファイルサイズを小さくすることができ、データをメールに添付して送る際などには非常に便利です。とくにBMPファイルなど画像ファイルの圧縮効率は高く、ときには1/100近くまで圧縮される場合もあります。
だから、サウンドファイルを送る場合でも、「大きなWAVファイルをLHaなどを使って圧縮すればいいじゃないか。きっと1/10とか、場合によっては1/100程度になるだろう」なんて思う方もいらっしゃるでしょう。
ところが状況は、ずいぶん違うのです。試しにCDからリッピングしてた後に編集した45秒のWAVファイルを圧縮してみましょう。これはCDのフォーマットそものもですから44.1kHz・16ビット・ステレオであり、ファイルサイズは7.57MBです。これをLHaで圧縮するとどうでしょうか?
7.57MBが7.16MBになります。そう確かに少しは圧縮されていますが、本当に1割弱の容量削減にすぎません。もちろん、この1つの実験だけでは断定的なことは言えませんので、別のファイルでも実験してみてください。おそらくCDからキャプチャしたデータなどでは、これと同じかそれ以上にひどい結果になることと思います。もちろん、LHaの代わりにZIPを使っても大差ありません。
つまり、オーディオデータというのは、ほとんど圧縮することはできないのです。