MP3はとても優秀なオーディオ圧縮技術であり、CDの音質をほとんど劣化させずに約1/11に縮めることのできる技術です。1分のデータが約1MBというサイズに圧縮できるので、インターネットを使って音楽データ配信なども可能になってきました。
それに対し、MIDIはインターネットが普及する遥か以前からパソコン通信などのネットワーク上でやりとりされていました。通信速度が現在の1/30程度のころから利用されていたのですから、どれだけコンパクトなものであるか分かるでしょう。実際、Windowsのサンプルデータとして最初から入っているcanyon.midというMIDIファイルは2分2秒の曲でありながら20.2KBというサイズですから、1分あたりたった10KB。つまりMP3の1/100というコンパクトさです。
なぜ、これほどまでにコンパクトであるかというと、MP3とはデータの構造、考え方がまるっきり違うからです。MP3がオーディオ圧縮であるのに対してMIDIは演奏データなのです。つまり、ド、レ、ミ……といった楽譜のような情報が記述されただけのものなのです。また、楽譜データだけでは音が出ないので、MIDIデータを再生するにはMIDI音源が必要となります。そしてどんなMIDI音源を用いるかによっても音質や曲の雰囲気は大きく変わってくるのです。
このような正確上、MP3データはCDを簡単に圧縮し、データ化することができますが、MIDIの場合は1つ1つ音符情報を入力していく必要があるのです。そのような入力をするためのツールがMIDIシーケンスソフトであり、MP3のデータ作成に比較すると気が遠くなるような作業量が必要となるのです。もちろん、このデータ入力にもコツやポイントがあるので、慣れてくれば1曲1時間程度で入力することも可能となりますが、それでもMP3とは比較になりません。また演奏情報のみであるため、ボーカルなど生音を入れられないというのも大きな違いです。
とはいえ、MP3の1/100のデータ量であるということは大きな魅力です。また、手に入れたMIDIデータを手持ちのシーケンスソフトを用いることによって、音色を変えたり、テンポを変えたり、音程を変えたり、場合によってはアレンジを大きく変えてしまうなど、素材そのものを自由にいじれるのは面白いところです。
このように同じ音楽配信に利用されているMP3とMIDIではその性格は大きく異なります。どちらがいいというものではなく、その用途も大きく違うものですから、その違いをよく理解した上で使い分けるといいでしょう。
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