年末調整しないと損をする理由とは?

年末調整の対象者から外れると、毎月の給与明細を合計しただけの源泉徴収票が手元に残るだけ、ということはガイド記事「年度途中で退職…退職者の源泉徴収票で注意してみるべき点」で解説しました。では、そのまま放置しておくと、税務上どのような不利益を被ることになるのでしょうか。
基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書のフォーマット (出典:国税庁資料より)

基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書のフォーマット(出典:国税庁資料より)

 

給与明細を合計しただけの源泉徴収票とは

給与明細を合計しただけの源泉徴収票には、社会保険料控除後の給与の多寡と扶養親族等の人数の多寡のみを基準に差し引かれた源泉所得税が記載されていることになります。

なお、ここでいう扶養親族等の数は、控除対象配偶者や控除対象扶養親族はもちろんのこと、障害者(特別障害者含みます)や寡婦、ひとり親または勤労学生に該当する場合にはさらに1人加算して取り扱うこととされているのですが、実際の給与計算の現場でそこまで厳密に取り扱われているケースはまれではないでしょうか。

しかし、本来所得税は給与の多寡と扶養親族等の人数の多寡のみで決まるわけではなく、扶養親族ではなくても配偶者控除配偶者特別控除の適用はできないか、生命保険料控除地震保険料控除に該当するものはないかなども考慮されて、所得税の再計算が行われます。
 

年末調整の対象外となったまま放置しておくと?

この再計算の処理手続きが年末調整です。したがって、年末調整の対象外となると、配偶者特別控除の適用はできないか、生命保険料控除や地震保険料控除に該当するものはないかなどということは考慮されず、所得税の再計算がなされないまま放置されることになるのです。
 

不利になるのは所得税だけではない

さらに重要なポイントは、下記のような源泉徴収票が納税者の手元だけではなく、納税者の住んでいる市区町村にも「給与支払報告書」という様式で勤務先(退職している場合は前職の勤務先)から送られることです。住民税の計算を行うための資料として、源泉徴収票が給与支払報告書という様式にかたちを変え、郵送されるのです。
中途退職源泉徴収票の記載例 (出典:国税庁資料より)

中途退職源泉徴収票の記載例(出典:国税庁資料より)

こちらに画像に中途退職した方の源泉徴収票の記載例を掲載してみました。
  • 生命保険料控除額が未記入
  • 地震保険料控除額が未記入
  • 配偶者控除(※)や控除対象扶養親族欄も未記入 
ということが理解できるでしょう。
(※源泉控除対象配偶者に〇印が付され、さらに花子さんが源泉控除対象配偶者である旨が扶養控除等申告書の記載例からわかりますが、これは毎月の給与計算の際、扶養親族等の数の適否を判定するもので、配偶者控除や配偶者特別控除は配偶者控除等申告書の記載内容で判断します)

このように年末調整の対象から外れたまま放置しておくと、配偶者控除・配偶者特別控除・扶養控除・生命保険料控除・地震保険料控除などの適用があったとしても、それらの適用が無視されたまま所得税住民税の計算されるということにつながります。つまり、受けられるはずの所得控除が考慮されず、課税を受けることになるので、所得税ばかりではなく、住民税も不利な課税がなされる可能性があるということとなります。
 

住民税の面で不利になるもうひとつの理由

また、昨年の源泉徴収票を基に今年の住民税が計算される点も、不利といえるでしょう。つまり、令和2年の源泉徴収票(給与支払報告書)を基に令和3年度の住民税が、令和3年の源泉徴収票(給与支払報告書)を基に令和4年度の住民税の計算がされるということです。

年末調整の対象から外れるということは、年末には在職していない、あるいは職に就けていない人がいるということにもつながります。にもかかわらず、現在収入のない人でも前年をベースに住民税が課されるのでダブルパンチとなるのです。
 

年末調整の対象から外れたら確定申告をしよう

では、年末調整の対象から外れた人が、きちんと所得税も住民税も計算されるためにはどうしたらいいのでしょうか。年末調整は勤務先が行ってくれる確定申告の簡易版という位置づけですので、本来の確定申告を自らの手できちんと行うということです。

所得税の本来の考え方というのは、申告納税制度といって「納税者が自ら所得と税額を計算し、納税を行う」というスタンスをとっています。そのような視点からみると「給与の支給時の源泉所得税を差し引く」ということや「勤務先が年末調整を行い、所得税の再計算を行う」ということはあくまでもそれを補完する手続きであるといえます。

確定申告を行うと、自動的にそのデータが納税者のお住まいの市区町村に送られ住民税を計算するための基礎データとしての役割を担うこととなります。確定申告書に上記のような諸々の適用できる控除が正確に記入されていれば、住民税も不利な取り扱いを受けることがないのです。

また、確定申告作成コーナーを利用して作成された申告書や電子申告で確定申告手続きをされた場合も同様です。その場合、税務署を通じて、データが市区役所の住民税の課税課にまわるので、所得税もきちんと精算され、なおかつ、住民税も正しく課税し直されるということにつながります。

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